小説 幕末志士の恋愛事情
□第一章
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気付くと、天井らしきものが見えた
「あたし、生きてる・・・?」
視界は徐々に鮮明になってきた
『ここ、どこ?』
場所を確認しようにも、体のだるさが、起き上がること、それ以前に体を動かすことを拒絶する
「気がついたんか・・・」
はっとした
気配に気がつかなかった・・・
気配に気づかないこと=死を意味する
そんな世界で生きているのに
顔だけを声のする方へ向ける
そこには、着物を着た大柄な男が柔和な表情をして座っていた
「ずっと目を覚まさんかと思っちょった・・・きっと今は起き上がれんじゃろうが、焦らんでええ。」
優しい眼差しと口調で、その男は私に話かける
この男から殺気は、微塵も感じられない
いまさらこの状態で警戒したとしても手遅れだ
とりあえず様子を見るしかない
「あんた、誰?」
「わしか?わしは、坂本龍馬じゃ。おまんは?まずは名前だけでも聞かせてもらってええかの?」
疑うことを知らない瞳
正直にその男は、名を告げた
その名前に、驚愕する・・・
「坂本龍馬!!??」
写真で見たことあるあの人物と、目の前の男の姿は、リンクするものがあった・・
でもあり得ない
私と坂本龍馬が同じ時代に存在するはずがない
夢を見ているのか?
「おまん、わしのこと知っちゅうがか?わしも有名人じゃの〜」
嬉しそうに笑みを見せる坂本龍馬と名乗る男
ドラマの影響をもろに受けた、龍馬狂か?
まだ情報が乏しすぎる
正直、まだ頭が朦朧としてる状態だ
今の思考回路では、すべてを把握するのは困難のように思える
朦朧とした意識を助長するように、睡魔が襲ってきた
また、暗闇の中に身を委ねた
「また、寝るんか・・・今日はゆっくり休み。また次目を覚ました時にの・・。」
龍馬は、静かにその部屋を去って行った