小説 幕末志士の恋愛事情


□第二章
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龍馬の看病のかいもあり、あたしは2日ほどでほぼ回復した



そして仲間を紹介されることとなった



3人の男が部屋に入ってきた



武市半平太、中岡慎太郎、岡田伊蔵



全員一度は耳にしたことのある名前だった
坂本龍馬という人物にリンクする



武市半平太は、全員のなかで一番落ち着いている感じの男・・・冷静沈着という言葉が合っている、この中で一番年上なのかもしれない


中岡慎太郎は、あたしと歳が近そうな背の低い、まっすぐで純粋な感じ


岡田伊蔵は・・・あたしと同じ雰囲気を持っている



あたしの名前は、龍馬の口から紹介された




「もう回復したようじゃし。どうじゃ、塔子のこと、ちくっと聞かせてもらえんか?」



あたしは、まだ龍馬のことを100%信用できないでいたし、自分の置かれている状況がはっきりしていない


そんな状態で、自分のことを深く語る気になれずにいたが


もう、これ以上足止めしてても状況はつかめない


意を決して自分のことを語る



「年齢は20歳。ここで気がつく前まで、東京にいた。仕事中に爆発にあって、そこからここで目が覚めるまでの記憶がない。」



話を聞いた龍馬達が不思議そうな顔をしている


「とうきょう?それはどこじゃ?聞いたことが無いのう・・・異国か?おまんの装いも異国のもんじゃったし・・・その割に言葉が通じる。。。ちなみに、今わしらがおるんは、京都ぜよ。あ、と、おまんの仕事は何ぜよ?」


東京を知らない4人に対する驚き、さらに自分が京都にいることに驚いた


「東京を知らないの?・・・ここが京都で、あなたが坂本龍馬・・・ねぇ、あたしをからかうのはやめてくれない?坂本龍馬とあたしが同じ時代にいるわけないし。そもそも、坂本龍馬って本物?それに異国って、あたしのあの服は一般的な服装よ。むしろ貴方達の方が時代錯誤って感じだけど?」




思ったことを全てぶちまけてみた


あたしの職業を言うのがためらわれた分、それで誤魔化そうとも




「・・・ますます不思議な話しじゃ・・わしは、坂本龍馬以外なにもないんじゃが・・偽名はあるが、坂本龍馬が本物じゃし・・・そうじゃ・・」



龍馬は、ひらめいた!といったような表情をして提案する


「今日はの、長州藩邸に行く用事があるんじゃ。そこに、面白い男がおる。その男に会わせてやるきに。そうすると何か見えてくるかもしれん。。どうじゃ?みんな」



3人の男に打診する


武市、中岡、伊蔵がそれぞれ口を開く

「それは、よい考えかもしれんな。」


「同感っす」


「先生がそう言うならいい。」



言い方は違うが、3人同意ということで、長州藩邸という場所に行くことになったが、そこで武市が核心を突く質問をしてきた




「だが、その前に、塔子さんの仕事を聞いていない。うまく煙に巻いたつもりのようだが?」



『武市という男は、あなどれない』・・そう思った


少しの間を置き、正直に自分の仕事を告白する


「あたしの仕事は・・・裏社会で客の依頼に応えること。スパイとか・・・依頼があれば殺しもする。」



「・・・なるほど、だからこげなモンを持っちょったんか。。。なんとなく、最初目覚めたときの印象が伊蔵に似ちょったんは、そういうことか。。して、スパイってなんじゃ?」


龍馬は懐から、あたしの拳銃を取り出した



「返して。それはあたしの仕事道具。」



龍馬に向かって手を差し出す



「いかん。今はまだ渡せん。」


また懐に拳銃を戻した



「返せ!」


命と同じくらい大切な拳銃を奪われたことに怒りがこみ上げ、反射的に体が動いてしまった


布団を撥ね退け、坂本龍馬に飛びかかろうととしたその瞬間、殺気に襲われる


それを肌で感じ、また元の位置に戻る


伊蔵だ


あのまま行っていたら、きっと斬られていた



「伊蔵、しまうんじゃ。彼女は丸腰じゃ。まぁ、ええもん見せてもらったがの〜・・・」


伊蔵は、静かに刀を鞘に戻す


龍馬は、なんだか嬉しそうな顔をしている

伊蔵以外の二人は少し顔を赤らめ、私から視線をはずしていた


『ええもん・・・?』


よく見ると、浴衣が乱れ、太ももが露わになり、胸元もぎりぎりまではだけていた・・


「ッ!!」


すぐに整えた


顔が紅潮していくのが分かる


仕事中に着衣が乱れても、相手が伊蔵のように無反応なことが常だった分、恥ずかしいという感情はなかったが、変な反応をされてしまうと、こちらも恥ずかしくなってしまう



「照れとるんか?・・・にしし・・・かわいいのう。そんな表情もできるんじゃな。ずっと怖い顔じゃったから、安心したぜよ。おまんは、笑ってた方がいいぜよ〜。・・・さて、そろそろ出かけるか。おまんも一緒に来るがじゃ。わしらではわからんことも、高杉さんならわかるかもしれんし。おまんも、外界に出てみれば自分の立場がわかるじゃろ。ほじゃ、出立の準備をするぜよ。」


そして4人は、順番に部屋を出ていく



あたしはあわてて、最後に部屋を出ようとする龍馬を呼び止めた・・・服が無いのだ



「ちょっと待って」



「どした?」



「あたしの服だけでも返して」



龍馬は、あっというような顔をした


「ほうじゃ、忘れちょった。あの服は少し痛んでおったが・・・まあ、あの服装で行った方が、説明しやすいしのう・・・わかった、すぐ持ってくる。一応、女将に頼んで洗濯はしてもろうとる。」



そう言って服を取りに行ってくれた


服は、あの衝撃で、結構傷んでいた


あちこちが破れていたが、体を露出するまでには至っていなかった


スーツを身にまとうと、少し気持ちが引き締まった


拳銃が無いのが手持無沙汰だったけど
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