novel

□prologue
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肌に感じる冷たい空気が冬の訪れを知らせる頃、俺のクラスに転校生がやってきた。

「お初にお目にかかる。某、真田幸村と申す」

時代を遡ったような喋り方をするその男、真田幸村は持ち前の爽やかな笑顔と明るさで瞬く間にクラスを越え学園の人気者になっていった。
そして今、俺は何故かその人気者に中庭というとっても人目に付く場所に呼び出されている。

「真田の野郎、こんなとこに俺を呼び出しやがって」

中庭のベンチに腰掛け、寒くて歯がガチガチと音をたてる。
今日は今年一番の寒さになるそうだ、天気予報も雪マークがついていた。
少し早めに来てしまったことを後悔した。

「これはcoffeeでも奢ってもらわなきゃ気が済まねぇ」

政宗の指先がピリピリと痛くなってきた頃、待ち合わせの時間ぴったりに幸村は現れた。

「お待たせ致しました」
「寒ぃ。とりあえず、熱いcoffee奢れ」
「承知致した。申し訳ない、つい佐助と話が長引いて」
「いいから、場所変えようぜ」
「そうでござるな」

それから場所を自販機が置いてある食堂に移動した。
放課後ということもあって、生徒が数人しかいなかった。

「うはー。外に比べたら天国だぜ」
「場所を考えるべきでしたな」
「本当だぜ」

幸村からcoffeeを渡され、近くの椅子に腰掛ける。

「で?わざわざ呼び出して話ってなんだよ?」
「その、驚かないでというのは無理だと思いまするが…」
「何だよ、回りくどいな」

もじもじと体を揺らし、視線も落ち着かない。
膝の上に置かれた握り拳がぎりぎりと更に強く握り込まれるのが見えた。

「真田?」
「某、転校生してきた初日より政宗殿の事をお慕い申しておりまするっ…」
「…は?」
「そのっ…!ひ、一目惚れしたのでございますっ…」




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