novel

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12月31日・大晦日。
あと数時間で年が変わろうとしていた。

「政宗殿…某、眠いでござるぅ…」
「HA…!まだ寝るには早いぜ、真田」

幸村は眠い目を擦り、うとうとと重くなる瞼を必死に開け眠気に耐えていた。
数日前から奥州の政宗の所へ訪れていた幸村。
年越しを一緒に過ごそうと政宗から誘われて来たのだが、いざあと数時間という所で自分の普段からの規則正しい生活と政宗に付き合って早いペースで飲んでいた酒が災いして、もう眠たくて仕方なかった。

「政宗殿…」
「おい、さな…っ!?」

眠そうな声に再び呼び起こそうとすれば、幸村の頭が肩に乗り、政宗は驚いて手に持っていた杯を床に落としてしまった。
顔を覗き込めば、幸村の目は閉じていた。

「Shit!こいつ、寝やがった」

完璧に政宗に体を預け寝入る幸村に政宗はため息混じりに呟く。
そして、床に散らばる徳利の数に目を向けた。

「ちょっと調子に乗りすぎたな」

政宗は酒の強い幸村を寝かせてしまう程ハイペースで酒を煽っていた。
それは年越しを二人で過ごせるのが嬉しいからで、照れ隠し故の行動だった。






「…ん」

幸村が目を覚ますと見えたのは天井だった。
まだ酒が抜けず頭がぼんやりとする。

「起きたか?」
「政宗殿…」

起きあがるといつの間にか体は布団に寝かされていて、しっかり肩まで掛け布団を掛けられていた。

「こっちの冬は寒いからな。寒さで起きたか?」

茶化す政宗は座っていた囲炉裏の前から幸村の所へと歩いてくる。
「すみません、寝てしまいました」
「本当だぜ。お陰でいつものように小十郎と年越ししてきたぜ」

てか小十郎空気読めよなぁ、ことの最中だったらどうすんだよな?と政宗は笑いながら幸村の布団に膝をつくと手を幸村の頬に当てる。政宗のその手の冷たさに幸村はびくりと肩を震わせた。

「随分冷えてますな」

幸村は添えられた手に自分の手を重ねる。

「手足の先まではなかなかな、暖まらないだよ」
「…それは某に暖めろと?」

クスクスと笑う幸村は誘いベタな政宗の精一杯の夜のお誘いに、政宗の腰を引き寄せる。

「俺を置いて寝た罰だ。ちゃんと暖めろよ」
「言われなくても。逆に熱さで根を上げないでくだされ」

政宗が幸村の首に腕を回したのを合図に幸村は政宗の腰を支え体を捻り政宗を優しく布団に組み敷いた。
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