novel

□Life
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叶わぬ恋だと知りながら。
どれだけ惨めでも。
やめたら?と託されても。

全ては独り善がり。
それでも諦められない。
一時の繋がりしかなくても。


「…真田」

大学の教室。
政宗は人集りの中心にいる幸村に声をかけた。
一斉に振り向かれ居心地の悪さを感じた。

「何ですか?伊達殿」
「あ、いや今日は…」
「今日は佐助」

そんな政宗など気にすることなく、幸村は周りには気づかれないように、政宗だけに見せる冷酷なまでの綺麗な笑顔で吐き捨てる。

「そうか…」
「旦那ぁ。俺様の用は大したことないから、」
「先に約束をしたのは、佐助なのだ」

残念そうな顔をした政宗に気を遣うように佐助が声をかけるが、幸村は政宗に見せた姿を一変し、佐助へ振り返りその表情はどこか幼さの残る可愛い笑顔の皆が知る幸村に戻っていた。

「だから、無理でござる」
「いつな、」
「わからぬ」

最後まで言わせてもくれないのか、と思ったが、いつものこと。
政宗は、じゃあ。と言い残しその場を後にした。

「旦那ぁ、伊達ちゃんに冷たくない?」

佐助は幸村が異常に政宗に冷たいことに気がついていた。
政宗も政宗でそんな幸村に刃向かう訳ではなく素直に従い、いつもああやって輪から離れて行く寂しそうな後ろ姿を佐助は何回も見ていた。

「いいのだ。ちゃんと埋め合わせをしているから」
「…ッ!」

幸村の愉しそうな笑みは佐助を驚かせた。
大人びた表情はまるで別人だ。

「佐助?」
「あ、何でもないよ…」

驚く佐助を幸村が不思議そうに名前を呼ぶ。
その時はいつもの幸村で佐助はしばらく幸村の表情を見ていたが、またあの笑み見せることはなかった。



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