novel

□FAKE
1ページ/38ページ

今から10年前二人は兄弟になった。
当時政宗15歳、幸村10歳。
政宗は無愛想にニコリとも笑わず、ただずっと幸村の母の問いに黙って頷くだけだった。
一方の幸村は逆にニコニコと笑って口の周りを汚しながらパフェを食べ、政宗の父の問に元気にハキハキと答えていた。

一緒に暮らすようになって、最初こそぎこちない家族だったものの時は経ち、今ではとても仲の良い家族になった。



「政宗殿、明日帰ってくるのですか!?」

ガチャンと幸村の茶碗がテーブルに置かれ、行儀が悪いと母に怒られるが当の本人幸村は気にすることもなく、その顔をぱぁっと輝かせた。

「そうよ。政宗くんには驚かせたいから黙っててって言われたけど、幸村びっくりして心臓止まっちゃいそうだったから止めたわ」

と母が笑いながら、兄である政宗の帰国を知らせた。
政宗は外資系企業に就職し、海外勤務を要望していた政宗は新入社員の中でも特に優秀で海外プロジェクトに抜擢され就職するなり海外出張をしていた。
そして任された仕事が無事成功し、政宗は日本に帰国することになったらしい。

幸村は心臓が止まるどころか激しく脈を打ち再会に胸躍らせた。





「佐助!政宗殿が明日帰ってくるのだ!」

次の日幸村は出勤するなり、同僚兼幼なじみの佐助を見かけると開口一番に政宗の帰国を知らせた。

「えー。政宗さん?また急だねぇ」
「3年ぶりに日本に帰ってくるのだ」
「そっか、3年も経ってたんだねぇ」

感慨深く佐助は3年前を思い出していた。
義兄弟の二人だったが、佐助が思い出す限りあっという間に仲良くなり幸村と幼い頃から一緒にいる佐助も気がつけば幸村といつも政宗の後をくっ付いて廻っていた。

当時高校生だった幸村の家族と政宗を空港まで見送りに行ったとき、最初から最後まで幸村は大号泣していた。
空港で最後に政宗に抱きしめられ幸村は泣くのを我慢して涙と鼻水でぐちゃぐちゃな顔のまま必死に笑顔を作り政宗の姿が見えなくなっても手を振り見送っていた。




.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ