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「んー…?」
唇に感じた暖かい感触が離れて政宗はいつの間にか閉じてしまっていた目蓋をゆっくり開けると、西に傾き始めた西陽の眩しさに眉を寄せた。
目が光りに慣れると目の前にはニコリと笑う幸村の顔があった。
「おはようございます。政宗殿、このような所で寝てしまっては風邪を召されます」
瞬きを繰り返す政宗に幸村は自分が着ていた羽織りを掛けると、眠る政宗に合わせて屈んでいた体を起こし、手を引いて政宗の体を起こした。
政宗は僅かな護兵を連れ幸村のいる上田城に数日前から滞在していた。
朝、政宗が起きた時には幸村の姿はなかった。
信玄に呼ばれた幸村は駆使してしまった政宗を気遣って静かに眠る政宗を起こさないように朝早く出て行った。
目覚め一番に見た幸村の配下忍である佐助にヘラヘラとそう説明されチラつくオレンジ色の髪を引っ張り即刻悪態をついた。
一日中暇な時間を過ごし、気づけば庭が一望出来る縁側で寝てしまっていたのだ。
「ほらこんなに、お手が冷えております」
「…相変わらず…んむっ」
暖けぇ…と言葉にする前に繋いだ手をグイッと引き寄せられ、ぶつかるように唇が触れる。
ジワリというよりドクンと熱が広がる。
「…何すん、だ…っ」
すぐ離れた唇。
手の甲で唇を塞ぎ、空いた手で距離をとる。
「何って“きす”でござる」
「kissって、んなの分かって…っ」
「それより、」
幸村の手が伸びて指先が政宗の唇に触れる。
「っ!?」
「ここは先程よりは暖まったみたいでございますな」
ニコリと微笑まれ、離れる幸村の手を掴んで自ら幸村の少しばかり冷えた指先に口付けた。
「何を…?」
「そんな冷えた指で俺に触れんな」
「暖めたおつもりか?」
「足らないってか?」
ニヤリと笑って返せば、幸村は手を握り返し、もう一方の手で政宗の髪を梳く。
「無論にござろう?」
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