novel

□Blood
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それは儚い夢。 




繁華街とは程遠い街。
街灯と家の灯りが見渡せる高台に政宗は立っていた。

「…見つけた」

研ぎ澄まされた嗅覚で捉えた愛しの匂い。
この肌が粟立つ感覚。
この街の何処かにいるソレに政宗の緩めた口元から現れた牙が月明かりに照らされ光を放った。



「初めまして、伊達政宗です」

数日後、政宗はとある高校にいた。
そう、たどり着いたのだ。
探し求めていたソレに。

「伊達の席は…」
「某の隣が空いているでござる!」
「じゃあ真田の隣に座って」
「はい」

後ろ髪が長く少し赤みのかかった髪が印象的なカレが手を挙げる。

「某、真田幸村といいます」
「よろしく、真田」
「はい…ッ!」

隣に座ると笑顔を向ける真田幸村に政宗も笑顔で返す。
政宗のその魅了させるような笑みは幸村の顔を紅く染めさせた。
政宗はその幸村の反応にうっすらと口角をあげた。

「と、とりあえず今日は某の教科書を一緒に見ましょう」
「Thanks」

離れた机をつけて距離が近くなる。
政宗の漂わせる雰囲気と今まで嗅いだことのない良い香りにどこか落ち着かない幸村の姿に政宗はほくそ笑んだ。



「政宗殿、制服はうちのに変えないのですか?」
「あぁ、別に変えなくていいみたいだからな。金勿体ないし」
「そうですか。うちの制服も似合いそうだったので残念です」

授業中一つの教科書を覗きながら転校生の政宗に幸村は興味津々で色々質問した。
黒板に書かれた文字をノートに写して、またバレないように喋るをずっと繰り返していた。

「ここ、真田」
「え…、はい…っ」

政宗との話に夢中になっていた幸村は教師に当てられ立ち上がると首を傾げうーん…と唸る。
幸村のその姿はいつものことなのか教室の中にはクスクスと笑い声が聞こえ、教壇に立つ教師も見慣れた幸村の姿に呆れかえっている。
政宗はそんな幸村の学ランの裾をくいっと引っ張り、トントンっとノートを指した。

「『今日お前ん家行っていい?』」


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