novel
□supply
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都内の高級高層マンション。
某階のワンフロアに彼が住むようになってからまだ半年。
エレベーターに乗り腕時計を見た。
「ちょっと早めに来すぎてしまった」
ちょっと困ったが、早いに越したことはない。
エレベーター内の鏡で身だしなみを整えた。
真田幸村。職業マネージャー。
担当するのは、若手実力派俳優・人気ナンバーワンの伊達政宗。
「政宗殿、おはようございますー!」
預かっている合い鍵で勝手に入ると丁度シャワーから上がったバスローブ姿の政宗と廊下で鉢合わせした。
「Good morning 真田幸村」
「少し早く来すぎてしまったんですが、今日は起きてらっしゃったんですね」
「あー。なぁ、まだ時間あんならコーヒー入れてくれ」
「承知しました」
ガシガシとタオルで髪を拭きながらリビングのソファーに座る。
リモコンを手にしてテレビを付ける。
朝の情報番組は丁度昨日政宗が出席した授賞式の映像を映していた。
「あー、やっぱ昨日ブルーのネクタイしてけばよかった」
「あちらも似合ってますよ?」
どうぞ、と幸村がコーヒーを政宗に手渡す。
「まぁ真田が言うならそーなんだろうけど、やっぱ俺はシックリこねーな」
「まぁ主催者から頂いたネクタイですからね、仕方ありませんよ」
ぶーぶーと文句を垂れる政宗に幸村は笑顔で返す。
今回の受賞を祝して直々に政宗に渡したのは、やはりそう言うことで長いモノに巻かれろではないが、上手くこの世界でやっていくには少なからず必要なコトだ。
「政宗殿、早めに出ましょうか?」
「えー、何でだよ」
最近ゆっくり自分の部屋に居ることすらままならない程、仕事が詰まってる。
有り難いことだが、まだ若い政宗には自分の時間が減ってきた生活にストレスが溜まり始めていた。
ヤダー、とそっぽを向く政宗の目の前に車のキーをぶらつかせる。
「特別」
「マジで!?」
「はい、社長には黙ってて下さいね?それと、くれぐれも安全運転、」
「わーてるよ!」
用意してくる!と笑顔で政宗は寝室に向かうとドアを開けた所で幸村の方に振り返る。
「真田幸村!」
「はい?」
「Thanks」
ドアの向こうでバタバタとクローゼットを開け閉めする騒がしい音がする。
政宗の言葉に呆然としていた幸村は分かり易い政宗に笑みを漏らした。
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