novel

□Long for You
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「むぁさむねどのぉーっ!!」
「わぁー、待った待った旦那ー!」

馬を爆走させ伊達の屋敷の門を突破した幸村は目指せ政宗と一目散に政宗の部屋に向かう。
その後ろで佐助が門番をしていた伊達軍兵士にあとで修理します…。と頭を下げていた。

「政宗殿!」
「……だ、誰?」

バンっと勢いよく開けた障子の先にいたのは右目に包帯を巻いた男の子がひとり。
びくりと肩を震わせ、驚きに筆を落とすと見たことない幸村の姿にオロオロと慌てだす。

「こ、こじゅ…小十郎ー!」
「ままま、まさ…っ!?」

小十郎の名を叫ぶと、机の下に置いてあった短刀の鞘を抜き、切っ先を幸村に向ける。

「な、何奴だ!」

ちょうどそこへ駆けつけた小十郎が幸村の姿を確認すると、梵天丸という少年に近づく。

「こ、小十郎ーっ!」
「梵天丸様、安心なされよ。小奴は的ではございませぬ」
「そ、そうなのか…?」

梵天丸の手から短刀を離させると鞘に収めた。

「真田…もう気づいてると思うが、」
「片倉殿…政宗殿は何処でござるか?」
「あぁ?だから政宗様は」
「某との間にこんなに大きなお子がおったと、何故お教え頂けなかったのだ、政宗殿!」
「おい、真田…」
「あら、今度は竜の旦那が小さくなっちゃったの?」

漸く謝り終えた佐助が現れ、すぐに状況を把握すると梵天丸の前にしゃがみ込む。

「だ、誰?」
「俺様真田の旦那の忍」
「忍…?」
「そう忍の猿飛佐助」
「全然忍んでない…」
「うん、俺様そーゆー忍なの」

頭に?を浮かべる梵天丸に笑って話し掛ける佐助。

「ふーん…竜の旦那、小さい時はぜんっぜん憎たらしくないんだねー」
「おい、佐助何を申しておるのだ」
「この子、竜の旦那だよ」
「…?」

斯く斯く然々と前にあったでしょ?と佐助に説明され、幸村はチラリと梵天丸に視線を送ると近づいて佐助の隣にしゃがみ込む。

「梵天丸殿?」
「な、何?」
「某、真田幸村と申しまする」
「…幸村?」
「はい、よろしくお願い致しまするな」
「うん…」

挨拶を終えると佐助は立ち上がり、小十郎に目配せする。

「じゃ俺様はかすがのところに行って来ますかね」
「すまねぇな、猿飛」
「だって竜の旦那がこの姿じゃ片倉の旦那外出れないもんね」

真田の旦那の事頼みましたよー、と佐助は忍らしく姿を消し越後へ向かったようだった。


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