novel

□NURSING
1ページ/7ページ

『伊達政宗、緊急搬送』

大々的に流れる夕方のニュース。

都内某所の大学病院の一室。
幸村は蒼白い顔をして眠る政宗の手を祈るように握った。

「政宗殿…」
「真田、取りあえずお前は現場スタッフと連絡を取ってスケジュール調整をしろ。離れがたいのも分かるが、お前はお前の仕事をしろ」
「はい…」

幸村は後ろ髪を引かれながらも、病室を後にした。


一週間の休みが懐かしいと思うほど、最近の政宗は以前にも増して仕事に追われていた。
連続ドラマの撮影、番宣、CM撮影、雑誌撮影。
目まぐるしい日々が何ヶ月も続き、今年一番の猛暑の日、どれだけ辛くても幸村以外には愚痴や弱音を吐かない政宗がリハーサルの途中でぼそりと「気持ち悪い…」と呟いた瞬間、バタリ…と倒れた。
その瞬間を幸村は離れた場所からまるでスローモーション映像を見ているように体が動かなかった。
緊急搬送された政宗は過労と熱中症と診断された。
やる気を出していた政宗に次々と仕事を持ってきた幸村は己の責任だと、深く落ち込んだ。

「政宗殿…許して下され」

病院の廊下で呟いた声は幸村にだけよく響いた。




「遅かったじゃねーか」
「ま、政宗殿ッ!?」

スケジュール調整を終えた幸村が深夜に帰宅すると、何故かそこにはソファーで寛ぐ政宗の姿。

「び、病院は!」
「逃げ出してきた」

勘弁してくだされ…と、肩を落とすと携帯電話を取り出し小十郎に電話を掛ける。

「お疲れ様です、真田です」
『…政宗は、お前のところか』
「はい」
『全く…、病院は大騒ぎだぞ』
「よく言っておきます」
『くれぐれも安静にしてろと伝えておいてくれ。病院には俺から連絡しておくから』

小十郎との電話を切りちらりと送った視線の先では、TVを見ながらケラケラと笑う政宗に大きくため息を吐いた。

「政宗殿、あまり無茶をしないでくだされ。病院は大騒ぎだったようですよ?」
「……病院は落ち着かねー」
「でも、まだ無理をされては…、」
「点滴されたし、平気だ」

ソファーに座る政宗の横に座り、注意を促せば案の定ふてくされて、プイッと顔を背ける。
幸村は政宗の頬に手を伸ばし触れるとぼそりと呟いた謝罪の言葉に政宗は背けていた顔を戻し幸村を睨んだ。

「何で幸村が謝るんだよ」
「無理をさせてしまいました」
「…俺の自己管理のせいだ」


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ