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□我が君知らぬ我が旅心
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旅行なんて彼に会うまでは一度もしたことがなかった。


今では旅行に行くのが日課みたいになっているけれど



海の潮風の暖かさも山の風景の美しさも、私に教えてくれたのは彼



それが少し悔しくて、少し…嬉しい。














その日、私は探偵団のメンバ−と博士と一緒にスキ−旅行に来ていた。



「ちょっと上まで行こうぜ」

雪だるまを作っている博士と探偵団の三人をぼうっと見ながらしゃがんでいると、工藤君がやって来てそう言った。

「ほら」

私のスキ−板とストックを差し出す彼。


「別に…良いわよ。私はここにいるから滑りたいなら一人で滑って来なさいよ」

「そんな所でしゃがんでてもつまんないだろ?」
彼はそう言うと、私の腕を掴んで立ち上がらせた。

「今ならそんなに雪降ってないからさ」
器用にスキ−板を履きながら彼はそう言った。



それでもスキ−をしたくない私は、彼の様子を眺めるばかりで



そんな私の様子に痺れを切らしたのか、私の側にやって来て
「履かせてやろうか?」
と、彼は言い出した。


「…馬鹿にしないでくれる?これぐらい自分で履けるわよ」
ガチャガチャと音を立てて私は乱暴にスキ−板を履いた。



「じゃあ、あそこのリフトで上に上がろうぜ」
そう言うと彼は私の手を引っつかみ、リフト乗り場まで連れて行った。
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