Special
□Desire
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ったく…やってらんねぇよ…
引き算の説明を黒板に書いている小林先生の姿をぼーっと眺めながら、俺は何度目かの溜め息を吐いた。
高校二年生にもなって引き算の勉強かよ…
今頃、クラスの奴等何してっかな…
少し前まで普通に通っていた高校の教室を思い出すと、胸が痛んだ。
あの時、ジンに妙な薬を飲まされていなければ
こんな姿になっていなければ
後悔ばかりが押し寄せる
早く元の体に戻りたい
昨日の晩から、何故だか俺はそう強く思うようになった。
「…どがわ君」
「え?」
「あたってるわよ」
灰原の声で我に返る俺。
焦って教科書をめくり始めると、隣の席からスッとノ−トが差し出された。
「3です」
と、灰原のノ−トを見ながら俺は答えた。
「正解よ!この問題難しいのに良く解けたわね」
俺の答えに満足そうに微笑む小林先生。
小林先生の大袈裟な誉め言葉に苦笑しながら、俺はノ−トに目を落とした。
すると先程の答えの横に小さく
『溜め息吐くなんてあなたらしくないじゃない。何かあったの?』
と、綺麗な字で書いてあるのに気付いた。
隣の彼女を見ると、いつものポ−カ−フェイスで黒板をじっと見つめていた。
そんな彼女の横顔を見つめていたら、ふと昨晩の出来事を思い出した。