Special
□ライバルは彼女
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あーくそっ!
口元を緩ませながらチラリと俺に視線を送った彼女に、心の中で悪態を吐いた。
「今回も学年一位は灰原さんで、二位は江戸川君でした」
歓声と共に「すごーい」「アイツら天才じゃねぇの?」等という大袈裟過ぎる賛辞の言葉が教室中を飛び交う。
全然っ嬉しくねぇし…
俺が負かしてやりたいのは灰原だけ。
順位や点数なんて、はっきり言ってどうでも良い。
アイツに勝てればの話だけどな…
今日は中間テストの返却日。
二回目の中学生活を送っている俺にとって、中学のテスト如きで一喜一憂する理由も意味もない筈なのだが…
大きな賭をしている今となっては、そういう訳にはいかない。
中学生になってから文武両刀、容姿端麗、絶対人気と何かと四字熟語に縁がある
ようになった灰原
俺はそんな彼女の様子が何故か面白くなかった。
彼女の弱点を知りたい。
そんなことを思うようになったのは、一体いつからだろうか。
彼女に告白した男の数が二桁を過ぎたあたりから、俺は彼女にしつこく弱点を尋ねるようになっていた。
何故そんな気持ちになったのか自分でも良く分からないけど…
そして、ここから賭が始まったのだ。
彼女は俺の問い掛けを余裕の表情であしらいながら
「私に一つでも勝てる物があったら、取って置きの弱点を教えてあげても良いわよ?」と言ったのだった。
但し、両者が平等に参加出来るものでという条件で。
つまりは俺の得意な推理対決もサッカー対決も駄目
俺達が平等に勝負が出来るのは…テストぐらいだった。
だが、純粋に知識を問うテストで小さい頃からアメリカで英才教育を受けて来た彼女に俺が勝てる筈はなく
毎度毎度苦杯をなめる結果となっていた。
今回こそはと徹夜でテスト勉強に励みリベンジを計ったものの、またしても僅差で彼女に負けたのだ。
今に見てろよ?絶対負かしてやっからな!
冷めた表情を浮かべた端正な彼女の横顔を見つめながら、心に固く誓った。