Special
□二人で探偵を(前編)
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「初恋の人を探すぅ!?」
「えぇ。そうよ。それが今回の仕事」
山のように来ている依頼から俺の仕事のパートナーである宮野が選んだ事件は、意外過ぎるものだった。
二人で探偵を
「ちょ、ちょっと待て!確か殺人事件の依頼が四つ…いや、五つはあったような」
「正確には六つね」
六つねって…
涼しい顔で答える彼女に、しばし絶句する俺。
「あ、そうそう。向こうの部屋で依頼人待たせてるから。呆けた顔早くなおして来て頂戴」
彼女はそれだけ言うと、扉の向こうに消えて行った。
依頼人待たせてるからって…
俺に拒否権はないってか?
仕事のパートナーとして一言ぐらい相談があっても良い筈なのに。
いや、今までだったら事件を引き受ける時は必ずアイツは俺に相談をしていた。
少なくとも、今回のように勝手に事件を引き受けて、依頼人を探偵事務所に連れてくるまで俺に黙っている…なんてことは一度もなかった。
ったく何考えてんだよアイツは…
このくそ忙しい時に、初恋の人を探す仕事なんて普通引き受けるか?
しかも、六件もの殺人事件の依頼を放り出して。
殺人事件の山のような資料を仕方なく手放し、椅子から重い腰を上げると、俺はノロノロと隣の部屋へと続く扉に向かった。