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□雨のち曇り、ときどき晴れ
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願わくば、雨を晴れに変えられるのは、自分でありますように。

晴れがもっともっと、長く続きますように。






雨のち曇り、ときどき晴れ







地下室の扉を開けると実験器具の間を行き来しながら、薬品の調合をしている少女の姿が目に飛び込んで来る。

子供の姿に全くもって不釣り合いな、けれど何故か彼女なら違和感を感じさせない、そんな白衣姿で。


「灰原」

「何?」



話しかけても振り向くことすらしない。


無愛想、不機嫌、おまけにポーカーフェイス。

あまりにもらし過ぎるその表情に思わず苦笑する。



「灰原」

もう一度、その名前を口先にのせると、気だるそうに不機嫌な顔を渋々こちらに向けた。




「だから、なに…っ」


「あーいちゃん!」

「こんなに天気の良い日に地下室にこもるなんて、不健康ですよ」

「おい早くサッカーしに行こうぜ!」


待ちきれないのか、サッカーボールをポンポンとリズミカルに跳ねさせる子供達。

冷やかに静まり返っていた地下室が、途端に賑やかになる。



その、あまりに突然の小さな来訪者たちに哀はしばし言葉を失った。





「ほら、行こうぜ?」

両手を頭の後ろで組みながら、口角を上げるそのお得意の表情が何とも憎々しい。



「…図ったわね?」

「何のことだよ?」


分かってるんだから。

この頃地下室にこもり気味だった私を、無理矢理外に連れ出すためにあの子たちを連れてきたんでしょう?






博士に見送られながら外へ一歩踏み出すと、春の眩しい日差しに包まれて、哀は目を細めた。
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