Special
□発令注意報
1ﾍﾟｰｼﾞ/5ﾍﾟｰｼﾞ
発令注意報
それは、突然の出来事だった。
退屈過ぎる中学校の授業を睡眠時間に利用している、哀の隣の席の少年。
いつものように教師に指名されて、欠伸を噛み殺しながら黒板に出て、スラスラとその答えを書く、見慣れた光景。
けれど、あと少しで少年が答えを書き終わる瞬間、いつもとは違う、不可解な出来事が起こった。
カツンと、床に落ちるチョーク。崩れ落ちる体。
「江戸川！」
「コナン君！」
その名前が教室に響き渡る前、疾風の如くその身をおどらせてコナンの元に駆け寄った少女。
悲鳴と怒号が響き渡る中、哀は少年の体を自らの膝に横たえながら、すぐさま緊急用の携帯電話を取り出した。
自分より小さくて華奢で。
柔らかな手の感触。
暗闇の中、聞こえるのは、彼女の心の叫び。
私はずっと、此処にいるから―
暗闇で冷たくなった心を溶かしてくれたのは。
何も言わずに、ただただ側にいてくれたのは――