Special

□夢か現か
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「あなた今日、部活あるんじゃなかったの?」
放課後、何故か急に一緒に帰ろうと言って来た江戸川君に私はそう言った。

「あ…いやまぁ今日は自主練っていうか…」
言葉を濁しながら言う彼。

「高校二年生の先輩が部活サボったら、後輩に示しがつかないんじゃない?」

「いや、だから別に今日は」

「それに今日は吉田さんと買い物する約束があるから。
荷物持ちになってくれるっていうなら、一緒に帰ってもいいわよ?」
なおも言い訳を並べようとした彼の言葉を遮って、私は言った。

「歩美ちゃんと帰るのか…そっか。なら安心だ。
…じゃあ、俺部活行くから」
私の頭をポンポンと二回叩いて意味不明な言葉を呟きながら、彼は走り去って行った。

何しにやって来たのかしら…と、私は首を傾げながらも、下足箱の前で待っているであろう吉田さんの元に急いだ。









「今日はいっぱい買い物しようね。それから今日こそは、哀ちゃんが言ってたお勧めの店に絶対に連れて行ってね」
ニコニコと笑いながら吉田さんはそう言った。

「ええ」
私は短く言葉を返した。

彼女の純真な笑顔はいつも私を安心させる。
今までに何度、彼女のその笑顔に救われたか分からないくらいだ。
彼女と知り合ってもう十年は経つのに、その笑顔は変わらない。

「まずは駅前の米花デパ−トからだね」
彼女がそう言った時、すれ違った幼い男の子が口ずさんでいる曲がふと耳に入った。





海は広いな大きいな

月は昇るし日は沈む






「…吉田さん御免なさい。私今日、買い物行けなくなっちゃったわ」

「え?」
驚く彼女の表情

「…っとに御免なさい」
私は辛うじてそれだけ言うと、彼女に背を向けて走り出した。

「ちょ…哀ちゃん!」
背中に刺さる彼女の声を無視して




御免なさい

でも私行かないと

今すぐに行かないと
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