Special

□夢か現か
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ザ−ンザザ−ン


やっぱり…
「暗くて黒い大きなもの」の正体はこれだったのね…


私は波しぶきを受けながら、どこまでも続く黒い海を見て立ちすくんでいた。

辺りは既に真っ暗闇で
目の前には暗くて黒い大きいものが一面に広がっていた。

これが、私の平和過ぎる毎日を蝕んでいたもの…



波打ち際から一歩前に踏み出すと
足元に冷たい感触



夢の正体は分かったけれど
私は既に夢と戦う気を無くしていた

こんなに大きな存在に、私が勝てるはずがないから
ちっぽけでちんけな私が
勝てる相手じゃないもの…



もう一歩前に踏み出すと
膝の辺りに冷たい感触



波しぶきを受けながら黒い海の前に立っていると、まるで夢の中に迷い込んだような気がした。

それとも、これが夢なのかもしれない
今、私がいる場所は夢の中なのかもしれない



もう一歩前に踏み出そうとした時
右手を強く引かれて、私は振り返った


「灰原…何してんだよ」

「江戸川君…どうして」
彼は息を切らしながら、私の右手を強く握っていた。

「歩美ちゃんに聞いたんだよ。お前がいきなりいなくなっちまったって…
小さい男の子の歌を聴いた途端に、走っていなくなっちまったって…
米花駅から一番近い海っていったら此処しかないだろ?」

流石名探偵ね…
そう言おうと思ったのに、口を開くことは出来なかった。

だってこれは夢かもしれないから
私が彼に会いたいと、余りにも強く思い過ぎて夢に出て来てしまっただけなのかもしれないから

それを確かめるのが怖くて
何も言えなかった

「灰原」

彼が私の名前を呼ぶのが聴こえる

「灰原」

暗くて黒い大きなものの側で

「灰原!」

彼の大声に少し驚いて私がゆっくりと顔を上げると、突然ギュッと抱きすくめられた。
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