Special
□些細な話
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「…昨日私のこと話したの?」
「あ…あぁ」
再び口を開くと、ワンテンポ遅れた彼の返事が聞こえた。
「別に私は構わないけど…あんまり変な誤解されないように気をつけなさいよ?
だいたい好きな人の前で他の女と手を繋ぐなんて…」
「昨日の話って何って、お前さっき言ったよな?」
私の言葉を遮るように彼は言った。
「…言ったけど?それが何なのよ。大した話じゃないんでしょ?」
「あぁ大した話じゃねぇよ……ただ俺の好きな人を蘭に紹介するってだけの話だから」
「……え」
冗談も大概に……と続けようと彼を仰ぎ見ると
赤くなりながら目を泳がせている彼の姿が目に焼き付いた。
何か…何か言わなければ
そう思ったのに、舌が上手く回らない。
ヒリヒリと喉が異様に渇く。
目の前には赤い彼の顔
強く握られた右手
繋がれた右手が…熱い。
何も言うことが出来なかった私は
静かに右手を握り返した。
心臓の音だけが煩く耳に響いていた。
end
次のペ−ジは後書きです。