Special

□些細な話
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ピーッ

帝丹高校の正門を抜けると、校舎の目の前に広がるグランドから笛の音が聴こえた。


私の足は自然とグランドの方に向いていた。


ワーッ

グランドに近づくと笛の音に混じった歓声も聴こえて来る。



グランドの中心部
ちょうど人だかりが出来ている辺り―

そこにはチ−ムメ−トにビシバシと叩かれている工藤君がいた。

「おっしゃ!同点だぜ工藤!このままもう一点決めろよ〜」

「おう!」

チ−ムメ−トから激励の言葉を受けた彼は笑顔で答えながらピッチに戻っていった。


笛の音と共に再開される試合



ガラリと変わる彼の眼差し

ボ−ルを追い掛ける生き生きとした姿


彼がまだ「江戸川コナン」だった頃、こんな風にボ−ルを追い掛ける姿は幾度と無く見てきたけれど

「工藤新一」に戻った後に、彼のこんな姿を見るのは初めてだった。


余りにも当たり前なことだけど

小学生の頃とは違うのね…


その端正で大人びた顔立ちも
スラリと伸びた手足も
たくましい体付きも



ボ−ルを追い掛けるその生き生きとした姿に胸が高鳴る。

クルクルと良く動く彼の姿を、目が追い掛けてしまう。

真剣な眼差しに吸い込まれそうだ。




ボ−ルを持った彼が敵チ−ムのゴ−ルに近づく

手に持っていたお弁当を思わずキュッと握り締めた。






大きく揺れるゴ−ルネット
再び鳴り響く笛の音




チ−ムメ−トに揉みくちゃにされている彼の姿を見た時、長く息を吐いた。


サッカ−ってこんなに緊張するスポ−ツだったかしら?



私何しに来たんだか…

握り締めていたお弁当を見下ろして苦笑した。
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