Special
□些細な話
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「宮野?お前何で此処に」
その聞き慣れた声に驚いて顔を上げると、額の汗を拭いながら不思議そうに私を見つめる彼の姿
いつの間にか体育は終わっていて、皆バラバラに校舎の方へ向かっていた。
「『何で此処に』じゃないわよ。……これ」
お弁当を彼の目の前に突き出す。
「あ…」
彼が何か言おうとしたその時、彼の背後からクラスメ−トらしき数人の男子生徒がヌッと顔を出した。
「おい工藤!誰誰?」
「早く紹介しろよ〜」
「あ、俺山田って言います。どうぞ宜しく」
「だーっ!お前らうっせーよ!あっち行ってろ」
彼はシッシッと手を振りながら私の手を引いて、足早にその場から立ち去った。
「ちょっと…どこに行くのよ」
「いいから」
彼はそう言いながら、体操服姿の女子生徒達が集まっている場所に私を連れて行った。
一体何を…
「蘭!ちょっと良いか?」
え?
も…毛利さん?
ドクドクと鼓動が速まった。
「え…うん。あ、園子先行ってて。すぐ後から行くから」
訝しげな顔をしながらも、私達の方に彼女が近づいて来る。
繋がれたままの右手を振り解こうとすると、益々強く握られた。
「昨日言ってた人だよ…コイツが宮野」
「この人が…」
「あぁ」
何の話をしてるのよ?
…全然分からない。
彼女の視線が…痛い。
混乱する頭を整理するために、取り敢えず彼に疑問をぶつけてみる。
「昨日の話って…?」
「あ…いや大した話じゃねぇから」
ボリボリと頭を掻きながら彼はそう言った。
プッ
そんな彼の様子が可笑しいのか、吹き出す毛利さん
「…じゃあ、私行くから。園子待たせたら悪いし」
「おう」
彼女はそれだけ言うと、眩しい笑顔を見せながら校舎の中に入って行った。
…何だったの?
彼女が何故私を知っていたのか
彼が何故彼女に私を紹介したのか
いくら考えても全く分からない。
「ねぇ、昨日の話って何よ」
「だから大した話じゃないって」
「じゃあ、何で彼女が私のこと知ってるのよ?」
「…」
彼は俯いたまま答えようとしない。
気まずい沈黙が流れた。