Special
□発令注意報
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その少年が瞳を再び開けたのは、病院のベッドの上だった。
「江戸川君?」
「灰原、おれ」
差し込む夕日に、眩しそうにパチパチと瞳を動かしながら、コナンは意識の覚醒を図ろうとする。
その様子に安堵の溜め息をもらしながらも、すぐにナースコールに手を伸ばそうとする哀の手を逆手に取って、ゆっくりと口を開いた。
「お前さー俺のこと、好きなの?」
超がつくほど鈍感、無自覚、気障でフェミニスト、そのくせ馬鹿に優しくって、命知らずで。
そんな少年の口から唐突に発せられた言葉に、少女は絶句した。
頭が真っ白になって、何も考えられなくなる。
その瞳に射抜かれて、動けない。
いけない。
このままでは、いけない。
病室のブラインドの隙間から洩れた夕日が、端正な少年の横顔にあたって、紅色に染め上げる。
開こうとしない口をどうにか動かして、哀の口からしぼり出た言葉は、かすれて上ずった声。
「ばか、じゃないの」
そう言って、思い切り背を向けて、制服のスカートをぎゅっとつかんだ。
ここに、いてはいけない。
いけない。
哀の中で警鐘が鳴り響く。
出来るだけ急いで病院から出ようと、哀は強張った足を一歩、踏み出した。
刹那、哀の片腕を強く引き止める力が、生まれた。