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□sweet roomのつくり方
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※一雨未来捏造です。



sweet roomのつくり方





実家から通うには微妙に遠距離な大学への入学を前に、引っ越しを検討中の石田へ同居を持ち掛けた俺が考えてた事なんか単純だ。

好きだから、少しでも長く一緒に居たい。

死ぬほど照れたけど真剣に伝えたその気持ちを聞いて、最初こそ渋ってた石田も結局は受け入れてくれた。
‥‥まぁ多分半分は、俺が見つけてきた格安物件と生活費折半の条件に魅かれて、だとは思うけど。
何にせよ、晴れて石田との同棲‥‥もとい同居が 決定し、正直俺は浮かれてた。

「で、あとは?衣装ケースだっけ。何階だい?」
「7階だな。あ、ついでにテーブル見ようぜ」

新居に必要な物の買出しに二人で出掛けるとか、ちょっと新婚みてぇじゃね?なんて思って密かに赤面しながらも、俺は精一杯平静を装って石田の隣を並び歩く。
何だかんだ言ってたわりに、雑貨やら家具やらをあれこれ見て回る石田は楽しそうで、それだけで何つーか‥‥幸せだ。笑いたきゃ笑え。

「そうだ黒崎。寝具売り場寄ってもいいかな?ベッド見たいんだけど」

粗方の買物を終えて引き上げようかとなった時、 石田が思い出したように言った。
――でも、ベッド?

「お前、今まで使ってたやつは?買替えんのか」

問うと、石田は何故か気まずげに顔を逸らして頷き、さっさと先に立って行ってしまう。
‥‥何だ?急に。

「ちょ、待て待て。俺も見るから置いてくな」
「君こそ買うのか。実家のは?」
「あれは置いてく。なぁベッドっていくらくらいだ?安くあげたいよな」
「安物は‥‥おすすめしないよ。壊れやすい」
「へぇ。そうなのか」

俺を見ないで真っ直ぐ前を向いたまま話す石田の背中に返事をしながら思い出す。確かにこいつんちのベッドは、チャチな造りのパイプベッドで。
そっか。壊れたから買い替えんのか。
ああ、そういや近頃、最中にやたらとギシギシ軋んでうるさいって、思っ‥‥‥。

「――‥‥あ、」

そこまで考えて、漸く石田の表情の意味に気付いて、俺は間抜けに固まった。
その俺を数歩先で振り返り睨む石田の顔は、今度こそ赤みがさしていて。

「‥‥何だ黒崎」

怒りの滲んだ低い声にちょっと怯む。けど。

「――や、それ、壊れたのってさ、‥‥お」
「単に古いから壊れたんだよ見当違いな事考えるな!」
「‥‥まだ何も言ってねぇよ‥‥」
 
でも、まぁ、そういう事だよな‥‥と、石田も思ってるのは間違いなく。
赤い顔した石田につられてこっちまで顔が熱くなってくる。
なんでこんな恥ずかしい思いしてんだ、俺ら。

「あ、おい待て石田!」

先にいたたまれなさに耐え兼ねた石田が踵を返すのを、慌てて追う。
つんのめる勢いで歩く石田は、けれど両手に下げた荷物が邪魔して、その歩調は俺を置き去りにするほどにはならない。
両手の荷物。それは、俺達がこれから重ねていく生活の為のものだ。
一人で生きていこうとする石田を何とか腕の中に捕まえておきたくて、俺 はいつでも結構必死で。
本当は石田は、そんな俺を重いとか思ってるのかもしれない。
だけど、重くても邪魔くさくても放さずに、むしろキツく握り締めてくれてる石田が、嬉しいと思う。
‥‥やっぱ俺、浮かれてんな。
恥ずかしくて頭抱えたくなるのも、何て事ねぇ気がする。

「なぁ石田」
「何だよ、もう今日は止めだ、出直す!」
「いいけど、勝手に買うなよお前。俺にも選ばせろ、頑丈なやつ」
「ッ‥‥じ、自分のをそうすればいいだろ!」
「や、まぁそうだけど、そうじゃなくてさ‥‥」

完全に臍曲げてる今の石田にこんな事言っても、絶対冗談じゃないってキレっから、まだ言わないでおくけど。
この思い付きは俺の中ではもう決定事項だ。

シングル二つも要らねぇよ、俺のとお前のは一緒なんだって。


きっとどう伝えても真っ赤な顔で怒るだろう石田を、なんて言って宥めすかそうか?





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調子に乗りすぎましたスミマセンorz
とんだバカップル!
 

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