短編

□俺のもの!
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甲斐は不機嫌だった。理由は、自分の目の前で味噌汁を、美味しそうにほうばる黒羽のことだった。黒羽は自分の気持ちに気付いてくれない、むしろ違う人物に気がいっている。
黒羽は田仁志のことが好きだった。何故知っているのかというと、黒羽は嘘をつけない性格のせいか、全部感情にでている。そのせいか黒羽は田仁志と一緒にいる時は、とても幸せそうな顔をしている。自分の時は、子供を扱うようだし、頼られるなんて今まで一度もない。…あの、黒羽に万年片想いの天根だってあるのに…。
―…春にとって、ワンはなにさぁ…。
甲斐は黒羽を想うと辛くなる。自分の位置を感じると、とくにだ。

「…なぁ、春…」
「ん〜?」
まだ、味噌汁をほうばっている黒羽は、甲斐の問い掛けに顔を上げる。
「…春にとってワンって何さぁ…?」
「はぁ?」
黒羽は突然の問いに首を傾げた。
「何って…友達、だろ?」
「……」
今の言葉は何となく鋭いナイフのように感じる。深く突き刺された気がした。
「…そっかぁ…」
甲斐は所詮は友達なんだと自覚する。なら天根が幼なじみで、田仁志は好きな子なら自分も何か印象付ければいい。
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