堕王子様の王子様
□髪好き鋏
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「さむーい」
先輩にまだか、と言う意味を込めて呟くも、彼はミーを気遣う人じゃない。もし寒いから帰るか、なんて言われたら違った寒気がする。
「まだですかー?」
だからもう1度、今度ははっきりと伝える。すると彼は不満そうに「まだ!」と返してきた。
「よくやりますねー……」
急に冷え込んだ秋も終わりの深夜。
ミーとベル先輩は暗殺任務に出ている。
いつものように先輩はぐちゃぐちゃと返り血まみれになりながら、楽しそうに遊んでいるのをミーは眺めていた。
ああ、寒い。
暖かい部屋で寝ている人がいる中で、ミーはこのくそ寒い外で突っ立っている。先輩に惨殺されてく奴もいるし。
しばらくしてやっと気が済んだのか、血の匂いをぷんぷんさせた先輩が上機嫌で隣までやって来た。
「カエル、かーえろっ」
「臭いですよー」
「あー楽しかった」
「原型留めてないですよねー。スプラッタ嫌いなんですけどー」
「……風呂入ろ」
「置いてかないでくださいよー」
先輩の顔もかなり血まみれだった。
よくもまぁここまで血を飛ばすことが出来るもんだと感心してしまう。
「……」
「なんだよ」
「いえ」
じっと見ていたら怒られてしまった。
どうやら先輩と遊んでいた人たちは刃物使いだったのだろう。
見せてもらえるのを待つつもりだったが、そんな日は到底来なさそうなのでラッキーと考えよう。
「せんぱーい……目、見えてますよ?」
「!?」
長い前髪の隙間が少し切れている。
全く気付かなかったらしい先輩は何処が切れているのかも分からず、結局両目を髪ごと押さえた。顔が赤くなっている。
が、もう遅い。
「緑だったんですねー……ミーと同じだから隠してたんですか?」
「!!」
どんどん真っ赤になっていく先輩が可愛い。
返り血で重くなったコートごと先輩をだきしめる。
「先輩可愛いー」
「離せクソガエル……!」
「離さないー」
あーミーの体温急上昇。
何でこんな可愛いんだろう。恥ずかしくて隠してたとか。どこの中学生ですかー。
「アジトまでこの体勢でいきましょーか」
「死ね」