堕王子様の王子様
□公認駆け落ち
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真っ白な夜の中、ミーと先輩は只今愛の逃避行をしている。
サーチライトに照らされ味方であるヴァリアーに捜索されるこの状況。それはヴァリアーを裏切り性別さえも超える駆け落ち中だからである。
「なにが『だからである』だよ。真面目に走れクソガエル」
そう言ったベル先輩も真面目に走っていない。後ろ手で腕組み&逆向き走行。
走り方なら断然ミーの方が真面目だ。
「えーだってそれっぽくないですか?このまま愛の逃避行しません?」
「バッ……!」
先輩はそのまま転んでしまった。赤くなっちゃって、かわいー。
起こすのを手伝って再び走る。今度は二人とも形は真面目に。
「……ったく。暗殺部隊がサーチライトとか目立つもん使うかよ。大体ボンゴレはホモばっかだろ。俺たちもボンゴレ公認なのにわざわざ駆け落ちとか意味分かんねー」
「やりたかっただけですよー」
先輩とね。
言ったらただでさえ拗ねているのにまた転んで拗ねそうだからやめておく。
わざと『言ってみただけ』と間違えたのには気付いていない。
「取り敢えず、早く捲いてココア飲みたいですー」
「俺も飲みたい」
「じゃあ先輩いれて。生クリーム入りで」
「てめーが入れろよ。王子だぞ」
愛の逃避行は冗談だとしても、ミーたちは軽口を叩きながら一応逃げている。
任務の帰りに見ず知らずの大量の雑魚から敵討ちと追われ……
いっそ殺ってしまえば楽なのに、死体が1箇所に集まって、しかもミーたちは静かにしていても追ってくる人たちはうるさいから騒ぎになるそうで……逃げる一択らしいそーです。
物乞いすらいない路地裏にそっと隠れて姿をくらます。
あったかいベッドがミーを待っているのに……ああ、恋しい。
「いーかげん殺っていい!?あいつらうぜー!」
「駄目ですよーたいちょーに怒られますー」
「知らねーしほっときゃいいだろ!」
「ちょ、先輩声大き……」
「そこにいんのかァ!?」
「!」
耳障りな声で頭の悪そうなセリフを吐く誰か。見なくても、ミーたちを追ってきた奴らだ。
先輩がナイフを構えて笑ってる。たいちょーに怒られるのはいっつもミー。
うんざりなお説教でゴロゴロ出来ないのはもっと最悪だから、たいちょーに従って先輩をその場から動かさないようにした。
要は今流行りの壁ドン。キスで。
もし見つかってもいいように幻術で普通のカップルにしておく。ありえないですけど、幻術と気取られても普通のカップルは使えないし、まさかヴァリアー幹部がホモで外でイチャついてたなんて誰が想像します?
「てめ……っ」
「何度も言ったじゃないですかー。見つかって騒ぎにしちゃダメなんですって」
「こっそり殺るし。気付いたら死んでるから。ぐちゃぐちゃにもしないし」
「ダメですー。絶対騒ぎになりますー」
耳を澄ますと、追っ手は近くにはいないみたいだった。帰ろ。
「帰りましょーせんぱーい」
「ギャグ?」
「続きは帰ってゆっくりとー」
「ギャグか」