堕王子様の王子様

□ Felice compleanno
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基本俺の眠りは深い方で、今日も任務の快感に浸りながら爆睡していた。

いつもならスクアーロが部屋の扉を壊す勢いで叩いて、任務だって起こしに来るはずなのに、今日は誰も来ない。
自然に目が覚めるまで寝たのって何時ぶりだっけ。
時計を確認すると昼を過ぎていた。昨日は雑魚だったし早めに切り上げたから随分寝たことになる。

着替えて談話室に行くと、幹部や部下が勢ぞろいしていた。ヴァリアーこんなにいるのか。初めて知った。


「おせーぞぉ゛」

「だったら起こしに来いし。何、なんかあんの?」

「本部に行くぞぉ゛」


スクアーロのこの言葉で、ついにクビだと思った。
九代目より更に温厚な十代目にトップが移った時からいつも思っていた。
それなりに需要はあるらしく仕事はあったけど、その仕事のクライアントは必ず綱吉の名前ではなく守護者の名前だった。
綱吉に隠れて依頼しているのがバレバレだ。


「そ」


だから特に驚くことはなく、こんな職業だしクビになったら殺される。もうちょい兄であるジルに会っておけば良かったと少し後悔した。せっかく生きてたんだし。
ソファに座っているフランは俯き震えていて、黒いカエルしか見えない。やっぱりガキだな、とは思ったけど馬鹿にしてない自分に驚いた。




「Buon compleanno!Belphegor!!」

「……は?」


本部に着いて部屋に通された瞬間、歓声と拍手、紙吹雪が舞った。
パァンと鳴らされたクラッカーからテープが弾け俺に絡まる。
思考も絡まりわけがわからない。

背の低いツンツン頭が寄ってくると思えばそれは綱吉で、仕事用の白スーツよりきちんとしたジャケットや明るめのシャツで、いつもより一層動きにくそうだ。


「誕生日おめでとう!ローソク消して!」

「誕生日?クビじゃねーの?」


人の死を祝う奴だっけ、と聞くと綱吉は首を傾げて笑った。


「クビ?まさか!ヴァリアーは大事な仲間だもん。そんなことしないよ」

「十代目はお優しいからな!幹部に限らず部下ひとりひとりに祝いの言葉をかけてくださる」

「暗殺部隊でも誕生日を祝うって聞かなかったんですよ。仕事をサボりたいだけでしょうに」


隼人や六道骸にそう言われたかと思えば、わらわらと人が集まり身動きが出来なくなる。

誕生日おめでとう、今日も綺麗ですね、自分はどこどこのマフィアのボスで……。

何だこれ。思考停止。
苦そうにシャンパングラスに口を付ける綱吉が言った。


「もっとこじんまりしたかったんだけど、いつも同盟マフィアさんたちが集まって結局こうなるんだ。ごめんね」


ボスである自分はもっと大変で凄いんだから、お前らもその辛さを経験してみろってことか。感涙してる隼人に呆れる。
お前のボスの綱吉、にこやかだけど目は笑ってねーぞ。
さすがジャッポーネ、腹黒い。

まだケーキの上で燃えてるカラフルな二十何本のローソクを吹き消す。
絶対ナイフで消した方が早いっての。
一度じゃ消えないから何度も何度も吹いてやっと消えたら、周りからわあっと歓声があがる。
王子そんなすげーことした?


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