堕王子様の王子様

□1/6 -out of the gravity-
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『せんぱ……』


その後直ぐに切れた電話。
掛け直したけど繋がらなかった。
アイツの事だから大丈夫だとは思うけど、身体は勝手にコートを羽織っていた。



フランの任務先の屋敷に着き探すもフランは居らず、まだ何が起こったのかさえ知らないマフィアのファミリーでごった返していた。

悪戯か……?アイツならやりそうだ。
寒い中出て来るんじゃ無かった。憂さ晴らしに殺っていい殺し屋いねーかなー。


「でもフランのなぁ……」


あんな声聞いたこと無いし……。
ポリポリと頭をかく。帰るか、探すか。


「……めんどくせ」


面倒な事はきらいなのに。




「カエルー」

近場のフランが居そうな場所を周り声をかけても、音が闇に吸い込まれて行くだけ。
ここで何ヶ所目だろうか。屋敷から随分離れたな。


「フーラーンー、おーいフランってばー」

「……そんな場所にいるわけ無いじゃないですか」


聞きなれた声。
見渡すと、少し離れた路地裏にフランがしゃがみこんでいた。
まるで捨てられた子供が迎えが来るのを待つ様に。


「本気でそこにいると思ってたんですかー?」

「カエルはいるから」


蛙って言ったらじめった場所じゃん。開けていたマンホールを閉めてフランの前に行く。


「……」

「……なんですかーじっと見ないでくださーい」

「いや……」


フランの目が赤くなっていた。
そう言えば微妙に鼻声だし、泣いたんだろう。

何で。また。

コイツが泣くとか世界が終わるんじゃないのか?例えば隕石で。……あ。
横に転がっていた邪魔だったらしいカエル帽を拾い上げた。


「帰るぞ」

「……カエル」

「王子さみーの。さっさと帰りたいから早く」


フランの顔は寒さと泣き顔で赤く、でも青かった。
どんな事で泣いてんのかはまだ知らないけど、このままだとフランは渦にはまって抜け出せなくなりそうだと思った。

泣いていた理由は心当たりがあった。
俺も怖いだろうな。自分が死ぬんじゃなくて、存在が無かった事にされる訳なんだから。死んでも残された人の脳裏に存在は残る。でもフランの事は誰1人覚えて無い。自分で見つけるはずの産まれた理由ですら、この戦いや六道骸脱獄の為だけだったんだから。

惨い。

いくら俺達が思っても変えられない。運命だから。白蘭が世界を壊す運命は変えたのに、フランだけ変えられない。犠牲の上……生贄じゃねーのか。

地球の外へ行くと重力は1/6だと聞いた事がある。無重力でも1/6は残るらしいが、触れないのだから意味は無い。
宇宙旅行でもしたら気晴らしになるかな。悩みも1/6……なんて。そのまま悩みが無くなるのが一番いいんだけど、せめて少しでも軽くしてやりたい。
変わる事は出来ないから。ただのエゴだけどさ。


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