堕王子様の王子様
□矛盾ポチ袋
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「あけましてー」
「おめでとうございます」
ジャッポーネ風に着物を着て頭を下げて挨拶をすると、顔をつきあわせ吹いてしまう。
「何だよ、うぜーな」
「だって先輩が真面目くさった顔で『おめでとうございます』とか似合わねー」
「おめーもな」
「カエル重いんで取っていーですかー?」
「却下」
舌打ちをしながらルッスさんの作った雑煮を受け取る。モチの入った野菜スープ。ししょーのとこでも何度も食べたからモチの食べ方は完璧ですー。
先輩はナイフで細かく刻んで、更に細かくしたモチをミンクに与えていた。
「ミンクうまい?」
「ムギュ」
「わかんねーや」
「じゃあ聞くなよ」
ずぞー。
特に作法は気にしない。
ルッスさんのご飯はばあちゃんや黒曜と桁が違うなー。
おせちにも手をつけていく。
ミーはナマスが好きだなー。先輩は栗きんとんやダテマキの甘い系が好きらしい。
「せんぱーい」
「なんだよ。俺はミンクにおせち食わせんのに忙しーの」
もっちゃもっちゃとまだモチを噛むミンクの口元に黒豆を持っていくが、ミンク嫌がってますよ。
相変わらずの器用さで、箸の使い方や作法が完璧の先輩。
両手で四角を作った。
「せっかくジャッポーネ風なんですからアレください」
「……次ダテマキ食う?」
「キュ」
「四角い袋に入っててこんぐらいの大きさでー貰うと嬉しいやつー」
「王子にたかる気かよ。ほいミンク」
「ムキュ」
「オートーシーダーマー」
「やんねーよ!」
「えー!くださいよー!」
ボスはくれたのにー!先輩とマーモンさんもボスから貰ってたけど。
腹がパンパンになったミンクは寝転がり、先輩にその腹を見せたがまだ食べさせる気らしい。
カニのミソスープをミンクの傍に持ってこられ、逆らえずにミンクの顔が強ばっている。
「そもそもお前オトシダマ貰える歳じゃねーじゃん」
「ミーはまだまだ十代のキュートでキャワワな子供ですー」
「久しぶりに聞いたなそれ……」
「そして先輩はいくら若作りしてても三十路ですから、ミーにオトシダマを渡す義務がありまーす」
「次それ言ったら殺すっつったろ」
サクサクっと軽快な音を立てカエルにナイフが刺さる。カチっと音がした。
まさか……。カエルを外すとナイフの一本がカエルの目に刺さっていた。ヤバ……。
「先輩ふせてー」
「は?何で……」
「ミーは言いましたよー」
カエルの鼻から銃弾が飛び出た。
ビームはまた違うスイッチがある。超音波振動も。
全く予想していなかった場所からの攻撃に先輩は唖然。
「なんだよそれ!?俺仕込んでねーよ!?」
「はいー。ミーが仕込みましたー。重量は相当キてますねー」
「ふーん。危ないから外しとけよ!また暴発とかたまんねー」
はい、1デレいただきましたー。
「……で、いつになったらオトシダマくれるんですか?」
「今いうわけ?」
「だってー元旦終わっちゃいますしー」
二人とも何も着てない状態でのこの発言。
先輩はたんまかけられてお怒りですねー。
「……オトシダマやるなら、出来ねーよな」
「何でですかー?」
「オトシダマ貰うのは子供なんだろ?でも子供はこんなことしねーし」
先輩がにやっと笑ったのが見えた。
勝ったとか思っているんだろう。
「そこまでミーはガキじゃないし、先輩も枯れてないでしょー」
「枯れ……!?」
「それにミーから先輩へのオトシダマ♡ですー」
「きも……」
矛盾してるのはわかってる。
先輩のために子供のままでいたいし、追いつきたいから大人にもなりたい。
成長期の身長は悩みなんて待たずに伸びていって、先輩は身長差が無くなることを気にしてるから、そっとミーはカエルを削り始めた。
多分先輩は気付いている。
「矛盾だらけじゃんお前」
「仕方がないんですー」
先輩が好きだから。