焔の明星さま
□ハルルの妖精
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「おーい、あまりはしゃぐと転ぶぞ」
「ルル〜、魔物が出るかも知れないですから私たちの傍を離れないようにしてください。」
朱毛の少女に呼びかけると、呼びかけに応えてこちらに駆けて来る。エステルの横をすり抜けユーリに抱き着いて来た。
「…ユーリばっかりずるいです…」
「そんなこと言われてもな。おい、ルルいい加減放せって」
渋々ユーリから放れる少女を見てカロルが呟く。
「もしかしてさ、ユーリのこと親だと思ってるんじゃないかな?」
「おいおい、おれはまだ21だぞこんなデカイ子供持った覚えないぞ…」
「どうゆうことですカロル?」
親と言われてユーリの顔が引き攣る。隣でユーリから身体を放し彼の服の裾を掴んでいる少女が首をコテンと傾げる。
「動物って生まれて初めて見たものを親だって思うんだってだからユーリに懐いてるんじゃないかな?」
「刷り込みということです?妖精にも刷り込みがあるなんて知りませんでした」
「…おいおい」
得意気に話すカロルの推測にエステルが目を輝かせてこちらを見る。まだ少女が妖精かなんてわからないのに彼女のなかでは朱毛の少女は妖精だと認識されているようだ。
※※※※
時は数分前
ハルルの樹から現れた少女がユーリに笑いかけ嬉しそうに抱き着いて来た。
「おい…何なんだお前は?」
「?」
どう見てもエステルと変わらないぐらいの少女がなんの戸惑いもなく抱き着いてくるものだから慌てていると少女は不思議そうに首を傾げて見上げてくる。
「こんばんわ。私はエステリーゼといいます。エステルと呼んでくださいね。貴女のお名前はなんというのですか?」
「?」
エステルが名を聞き出そうとすると少女はやはりわからなそうに首を傾げる。
「名前だよ。な・ま・え。俺はユーリだで、お前は?」
「ゆーり?…ゆーり!!」
少女の第一声はなんと俺の名前で嬉しそうに何度も呼んでいる。横でエステルがあからさまに落ち込んでいた。
「うぅ。なんでですかぁ〜」
「ゆーり、ゆーりーおれはねぇ〜………」
漸く少女の名前が聞けると固唾をのんで見守る。
「……わすれた?」