焔の明星さま
□渡り鴉の羽ばたき
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ギルドの街ダングレストに訪れた途端魔物の襲撃と結界の消失がおこり街はパニックにおちいった。
ユーリ達も魔物の討伐に力をかすが次から次へときりがなく現れる魔物に逃げ惑う人々を守りきれずにいると、そこへ魔物を一気に蹴散らす人影が乱入した。
「さぁ、クソ野郎ども、いくらでも来い。この老いぼれが胸を貸してやる!」
「とんでもねえじじいだな。何者だ?」
「ドンだ!ドン・ホワイトホースだよ!」
「あの、じじいがね」
白髪に立派な髭を蓄えた老人はもういい歳だろうに身体はしっかり鍛えられ、かもしだす覇気とも言うべきオーラがその大きな身体をさらに大きくさせているようだった。
「ドンだ!ドンが来たぞ!」
「一気に蹴散らせ!俺達の街を守るんだ!」
ドンの出現に街の人々の士気が高まり次々と人々が魔物に向かっていく、そんな人々の中に騎士の姿が見え始めた。
「あれ?ゆーりあれ、フレンじゃねぇ?」
「フレン!」
ルルは騎士達の中にフレンであろう人影を見つけ、すぐにエステルの声も上がったことからフレンで間違えないだろう、まぁあんな堅物か何人もいたらそれはそれで面倒だが。
「魔物の討伐に協力させていただく!」
「騎士の坊主は、そこで止まれぇ!騎士に助けられたとあっては、俺らの面子がたたねぇんだ。すっこんでろ!」
「今はそれどころでは!」
「どいつもこいつも、てめえの意思で帝国抜け出してギルドやってるんだ!いまさら、やべぇからって帝国の力借りようなんて恥知らずこの街にはいやしねえよぉ!」
「しかし!」
「そいつがてめぇで決めたルールだ。てめぇで守らねぇで誰が守る」
「何があっても筋はまげねぇってか・・・なるほど、こいつが本物のギルドか」
ドンとフレンのやり取りを眺めていると消えた結界を戻すために結界魔導器の場所へ案内するようにカロルがリタとエステルに詰め寄られる。
ここにいても出来ることはないなら自分達の出来る範囲でこの街を守らなければ、カロルは魔導器に向かって走っていくのをエステルがついて行き今だドン達を眺めていたユーリ達にリタは「あんた達も!」と急かす。
「それしかなさそうだな。ルル行くぞ!・・・・ルル?」
「あっ、うん!!」
ルルは名残惜しそうにドンを見ながらユーリの後をついて駆け出した。
***
リタが壊されていた結界魔導器を修復し、魔物をフレン達騎士団に任せ、ドンに会いに来たユーリ達だったが、ドンは魔物の群れを追っていったらしく門前払いされた。
しかたがなく、リタがアレクセイに受けた依頼の為一行は先にケーブ・モックの調査に同行することになった。
道中エステルがドンについて尋ねるとカロルがそれはいきいきとドンについて語りだした。
「とにかく大きい。声も、体も、態度も、全部が!」
「見た目の話ならしなくていいぞ。俺らもう姿だけならみてるから」
「だとするとそうだな。とにかくすごい人なんだ!」
「カロルがドンを尊敬しているのは、なんとなく伝わってきました・・・あとはちょっと」
「だから、ドンは言葉では言い表せないくらいすごいって事!」
抽象的すぎてドンについて凄い人という情報しか伝えわらなかったが、そんなカロルに同意する声があがる。
「うん!なんかみてるだけですげぇひとっておれにもわかった!!かろる、どんってかっこいいな!!」
「えっ!わかってくれるそうなんだよ。ドンはカッコいいし強くてすごい人なんだ!」
お子様2人はドンについて瞳をキラキラと輝かせながら熱く語っている。
子供がヒーローに憧れるのと同じだろう2人にとってはドンはまさにヒーローなのだ。
「つえぇし、しぶくてかっこいいよな。とくにひげが!!」
「えっ・・・・」
そんな熱弁も此処までのようだルルの発言にその場は水を打ったように静まり返る。
「髭?声や体や態度でもなく髭?!」
「そうだろ?ひげが、しぶさをひきたててかっこいいじゃん!ああ、おれもひげはやしたい・・・・」
「だ、だめですそんなの!!」
「なんでだよ?いいじゃんか」
「ねぇ?あの子髭フェチだったわけ?」
「いや、俺も今知ったばっかなんでな」
ルルに髭ねぇ・・・やべっ笑えるわと想像した為に噴き出してしまいリタから冷めた目で見られた。これは、エステルに頑張ってもらわねぇとな。とユーリが頷いて自分もルルの説得にむかう。
しかし、誰も女のルルにドンのような髭を蓄えることはでないと突っ込まない・・・