焔の明星さま
□ハルルの妖精
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思わずこけそうになる。
「ななんで!?自分の名前でしょ!?」」
「わかんない…きがついたらここにいたし…おれ…だれだろ…」
少女が寂しそうな顔をして呟くと、エステルが何かを思い付いたように声をあげた。
「もしかして…ハルルの樹から現れましたし…ハルルの樹の精なのではないでしょうか!!」
「…エステルそれはいくらなんでも」
「僕妖精って初めて見たよ!!」
「…妖精で確定なわけね」
「ゆーり、おれようせいなのか?」
「いや、俺に聞かれてもな」
小さな子供のような仕草でユーリに尋ねる。
「俺にはどうみてもお前は人間に見えるし、それにな、お前はお前で良いんじゃなねぇのか?」
なんとはなしにそう言えば少女は目をぱちりと瞬かせ嬉しそうに、うん。と言って頷いた。
そんな話をしているとラピードが再び 城で襲ってきた連中を指し示す。
「そうだったな。すぐにここを離れないとな。エステル行くぞ」
「あ、はい。…でもこの子どうするんです?」
「連れて行くわけにもいかないからな。村長にでも預かってもらおうぜ。」
「………いや…いや!…いやだ!!おいていかないで!!なんでもするから、役に立つから……」
少女はいきなり取り乱し、縋り付いてくる。目の焦点はあっておらず何かに怯えているように見える。
「おい!!行き成りどうしたんだ!!」
「様子が変です!!」
「どうしたの!?ねえ!!」
少女の様子にユーリ達は慌ててそれぞれ少女に問いかけるが聞こえていないようだ。すると、今までいやだ、いやだ、と繰り返していた少女はいきなり、ユーリから体を離し座り込んだ。その顔は虚ろで呼吸を乱し今にも泣き出しそうな顔をしている。
「…おれ…か・・わ・るから、いまのおれをすてて…みん・な・・の望むように変わるから…俺を見限らないで…捨てないで…おいて…いかないで………一人にしないで!!」
少女のあまりにも悲痛な叫びに、誰も言葉を発せられずたたずんでいると、ユーリが少女に目線を合わせる様にしゃがみ、少女の頭をガシガシとなで笑いかける。
「捨てたりしねぇよ、それに変わる必要もないぜ。言ったろ?お前はお前でいいって、な?」
「そうです!!ただ私達はあなたを危険なめに合わせたくなかっただけなんです。ですが…言葉が足りずあなたを不安にさせてしまいました。ごめんなさいです。」
エステルが微笑みながら安心させるように少女の手を包みながら言う。ラピードも少女に近付き慰めようと体を摺り寄せる。
「ねぇ、ユーリ。この子も連れて行こうよ?このままここに残して行くほうが心配だよ。」
「そうだな。なんたってこっちには、魔狩りの剣のエース様がいらっしゃるんだ、こいつ一人守るのなんて簡単だよね?」
「えっ!?…ま・・まかせてよ!!!」
「決まりだな」
「はい。」
立ち上がると少女に手を差し伸べ今だ呆然としている少女を立ち上がらせる。
「んじゃ、行きますか。行くぞルル」
そう呼ばれてきょとんとしている。少女、ルルと不思議そうにしている面々にユーリがハルルの樹を見ながら答える。
「いつまでもこいつや妖精じゃ呼びにくいだろ?だから、ハルルからとってルル。気に入らないなら他の考えるけど?」
ルルがはっと、われに返り首をぶんぶんと横に振り、嬉しそうにルル、ルルと繰り返し呟いているその様子がエステルと被り笑えてくる。
「そんなに嬉しいのかねぇ」
「ルル。これからよろしくお願いします。」
「僕、魔狩の剣のエースのカロル!!よろそく!!」
「ワン!!」
それぞれ自己紹介をし村長の家に向かおうとすると後ろから声を掛けられる。
「ゆーり!!ありがと!!」
満面の笑顔でそう言うとエステル達の方に駆けていく。
「…どういたしまして。」
ユーリはそう聞こえるか聞こえないかの声を掛け再び歩みを進める。
村長の家を後にした一同はアスピオへ向かう。