焔の明星さま
□満月の想い
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地下の続く螺旋階段を降りて行く途中で後ろから何かが倒れる音が聞え、振り返るとルルが倒れていた。
「ルル!おい、大丈夫か?」
「う、うんだいじょうぶ・・・」
「あんたそんな青い顔して無理すんじゃないわよ。」
「そうです、今治療します。」
「ううん、ほんとになんでもないんだ・・・ただ・・・」
ルルは言葉を濁し、信じられないものを見たように自身の左手を見た。
その様子に左手をケガしたのかと心配になった皆が彼女の左手に注目する。
その時、一人だけずっと黙っていて会話に参加していなかったカロルが声をかけてきた。
「ねぇ、僕後ろで見てたんだけど・・・ルル何かに弾かれたみたいなんだ」
「弾かれた?」
「うん・・・ここからさきに、いこうとすると・・・」
ルルが左手を伸ばすと左手を何かが弾きルルは痛そうに左手を引っ込めた。
「っ!いまみたいになにかにはじかれて・・・」
「何どうなってるの?こんなの聞いたことないわよ!?」
リタは人一倍驚き、魔導士として研究者としてその現象を解こうと考え始めた。
「ルルだけが進めないなんて・・・」
「なあ、みんな、おれのことはいいからさきにいってくれ、おれ、まってるから」
ルルは意を決したように皆に自分を置いていくように言った。
「だめだ、魔物に襲われるかもしれないんだぞ」
「だいじょうぶ。おれ、こうみえてもつよいから・・・じぶんのみはまもれるよ」
顔は笑っているが無理していることが丸わかりだ。
ハルルで初めて会った時、ノール港の時と置いて行かれる事をあんなにも恐れていたルルが自分から置いて行けと言うのだ小刻みに震えている身体を見ればただの強がりだと窺える。
「・・・でも・・」
「ここでちんたらしてて、ようへいだんににげられたりしたら、もともこもないだろ?」
「・・・わかった。ただし無理はするなよ」
「ユーリ!!」
「うん。わかってる」
ユーリがルルの申し出を了承するとエステルが非難の声を上げようとする。それをユーリは左手で征し、ただし、と言葉をつけたした
「ラピードお前はルルについててくれ」
「ワン!!」
「え!?いいよ。だいじょ「これをのめなきゃ街まで引き返す」えっ!!もう、わかった。よろしくならぴーど」
「ワン!!」
ルルとユーリにラピードが任せておくと応えるように吠えた。
***
「ゆーりたちだいじょうぶかな・・・」
心配そうに呟いた言葉にラピードはルルに寄り添い、心配ないとでもいいたいように擦り寄ってきた。
「ありがと、らぴーど。そうだよなゆーりたちだもんな・・・」
その時、何かが崩れたような音が響き建物全体が揺れた。
「な、なんだ!?あっ、えっ、とおれる・・・」
よろめいた時に先程弾かれた地点を越えてしまい自分もこの先に進めるようになっていることに気付いた。
「うあああああ」
「かろる!?かろるどうしたんだ!?ゆーりたちは?」
一人走ってきたカロルを捕まえてユーリ達のことを聞くとカロルは震えながらたどたどしく言葉を紡ぐ。
「し、下に、見たこともない巨大な魔物がいて、ま、魔物を閉じ込めてた結界も消えちゃって・・・そ、そしたら魔物があ、暴れて足場が崩れてそ、それで・・・っう、ううああああああ」
「かろる!!」
カロルは耐えられないといったようにその場を声を上げながら去って行ってしまった。
カロルの説明では状況を把握出来なかったがカロルの様子から尋常じゃないことが起きていることだけはわかった。
「ゆーり・・・ゆーり!!」
ルルはすぐにラピードと共に走って行った。
一刻もはやくユーリたちの無事な姿を確認したい、大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせながら走りつづけた。