焔の明星さま
□渡り鴉の羽ばたき
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「これ、ヘリオードの街で見たのと同じ現象ね。あの時よりエアルが弱いけど間違いないわ・・・・」
「あの魔物もダングレストを襲ったのと様子が似てます!」
「来やがったぞ!」
ケーブモックの奥でヘリオードと同じ現象が起きていた。そのエアルの乱れに引き寄せられてきたように魔物が大群で襲ってきた。
「ああ、ここで死んじまうのか。さよなら、世界中の俺のファン」
「世界一の軽薄男ここに眠るって墓に彫っといてやるからな」
「そんなこと言わずに一緒に生き残ろうぜ、とか言えないの・・・・!?」
「れいぶん、ゆーりはいきのこるつもりだから、れいぶんだけみすてるなんてぜってーしねぇって。それに・・・おれがみんなをしなせない」
「…ルル」
笑いながらそんなことを言うルルの瞳には強い意志が見られた。ルルは確かに強い、だが、いつだって俺らを守りながら自分が傷つくのはお構いなしに剣をふるうその姿はとても危ういように感じられた。
魔物から後衛を守りきれず後衛が攻撃せれたり、自分が怪我を負ってエステルが治癒術を掛ける時もルルは申し訳ないと自分を責めるのだ。俺らは万能なわけじゃない。複数の魔物に襲われれば後衛を守りきるのは難しいのは当たり前で、それをわかってるから後衛で闘ってる仲間たちも自分から魔物と距離を置くために移動したり、接近してきた魔物に武器で応戦してくれる。
決して守り抜けないことを責めたりはしない。
なのにルルは自分の力が足りないからと自分を責める。治癒術を掛けられるときもこれくらい大丈夫だと逆にエステルを労わってエステルの言葉に耳を貸さない時もある。
その戦い方はまるで………
ルルは何度言い聞かせてもその戦い方をやめよおうとはしなかった。言えば言うほど悲しそうに瞳をふせて…ごめんなさいと謝り、でもこうしないと不安で怖いと泣くのだ。
そうじゃない、謝ってもらいたいわけじゃない…そんな顔をさせたいわけじゃねぇんだよ。
お前がそういうふうにしか戦えないなら…
「じゃあ、お言葉に甘えて守ってもらうとしますか、その代り俺がお前を守ってやるよ。安心して背中任せときな。そういうわけだからおっさんは俺が危なくなったら体張って盾になってくれ」
「ちょっとどういう理屈!?ルーちゃんこの兄ちゃんおっさんと生き残る気ないわよ!!」
「あははは…」
「ちょっとあんたら今の状況わかってんの」
そんな場違いな和やかな雰囲気を醸し出していても状況が変わるわけでもなくいまだに目の前には魔物群れが今にも襲いかかろうとしている。
その時白髪の男が両者の間に降り立ち手にしていた奇妙な剣を振り上げる。その途端あたりのエアルの乱れが収まり魔物達もどこかへ消えていた。
「誰・・・・?」
「デューク・・・」
白髪の男ーデュークーはそのまま何事もなかったように立ち去ろうとしたがリタに呼び止められ無言でこちらを見た。
「その剣は何っ!?見せて!今、いったい何をしたの?エアルを斬るっていうか・・・ううん、そんなこと無理だけど」
俺がお前を守ればいい…お前が不安を感じなくなるようになるまで…
「知ってどうする?」
「前にも魔導器の暴走を見たの。エアルが暴れて、どうすることも出来なくって・・・それがあれば魔導器の暴走を止められると思って…」
「それはひずみ、当然の現象だ」
「ひず・・・・み・・・・?」
どうやらデュークは何か知っているようだが話す気がないのか「エアルクレーネには近付くな」と言い残して去って行ってしまった。
エアルクレーネ。エアルの源泉そんな話し誰も聞いたこともない。何もかも初めて聞く話ばかりでリタの中でも整理がつかないらしい。
「・・・まさか、あの力が『リゾマータの公式』・・・ここだけ調べても良くわからないわ。他のもみてみないと」
「他のか・・・・さっきの人、世界中にこういうのがあるって言ってたね。」
「言ってたねぇ」
「それを探し出して、もっと検証してみないと確かなことは何もわかんない。」
「・・・じゃあ、もうここで調べることはないんです?」
「んじゃ、ダングレストに戻ってドンに会おうぜ」