お話

□麦雨三景
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【第一景:竜貴】





黒崎家の墓所を、知っているか——と。
織姫から尋ねられたのは、2日前。
その日も例年通り、一護は学校を欠席していた。

どうして?——と問いかける言葉を、声に出す寸前で飲み込む。
特定の場所の所在を尋ねる…その理由など、おおよその場合、ひとつしかない。

「付き合おうか?」

私の教えた行き方をメモする手を止め、ゆっくりと面を上げた織姫は、申し訳なさそうに…でも、キッパリと首を横に振った。
そして、微笑む。
今にも泣き出しそうな顔をしながら…それでいて、強い決意の光を、瞳に宿して。

——そして、今夜。
打ち込んでは、消し。
打ち込んでは、消し…を、断続的に数時間にわたって繰り返したのち、私はギュッと目を瞑りながら、一護に宛ててメッセージを送信した。

直後に、電源を切る。

半ば放り投げるように机の上に携帯を置くと、そのままベッドにダイブし、頭の上まで夏掛けを引き上げた。




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