捧げもの
□終わりに見る景色に、は
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「二度と俺に関わるな」
俺の投げつけた言葉に、澄んだ瞳が凍りつく。
冷たい緯線を彼女に向ける、俺の姿を写したまま……。
……こうなる事は、わかっていたんだ。
それでも、今の俺にはこのやり方しか選べなかった。
胸が、痛む。
それこそ、張り裂けそうなほどに。
今のは、嘘だ……と。
走り去る彼女の背に向かって叫べたならば、どんなにか良いだろう。
本当は、ずっと側に居たいのだ……と。
この腕にあの細い肢体を抱きしめて、耳元で囁くことが許されるなら……どんなにか。
………ごめん、井上。
本当に、ごめんな。
恨んでくれて、いい。
憎んでくれて、いいから。
……だから。
どうか、俺を忘れて。
君は、君の未来へ。
俺にはもう、共に行くことは叶わないから。
君、は。
君だけは。
どうか、自由に……。
【終わりに見る景色に、は】
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