賜りもの

□綿菓子の夢
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*綿菓子の夢






ポンポン






「そんなに気に入ったの?」
「何かすげぇ癖になるな、これ」
「お気に召して良かったです」






井上とお参りの列に並ぶ。
井上の手には真っ白い綿菓子、俺の手には井上が被っている綿菓子みたいなふかふかの帽子。




去年は着物を着ていたけど、屋台でいっぱい食べたいからって今年はワンピースの井上。
帽子姿がすげぇ可愛くて、でも上手く褒められない照れ隠しに頭を撫でるとその感触が妙に気に入って、さっきからやたら触りまくる俺。






綿菓子みたいだなって言うと、食ってる綿菓子を井上が頭の横まであげて「間違えないでね」なんて言うから2人して笑った。






「あーあ、食べ終わっちゃった」
「まだ頭の上にあるぞ」
「あはは」






2人で他愛もない話しているうちにあっという間に順番が回ってきて手を合わせる。
でも、俺の願い事なんてたかだか健康とか、学業成就とかそんなんで、ものの何秒かで終わっちまった。
ふと、隣を見るとまだしっかりと目を閉じて、まだ祈り続ける綿菓子頭。






どんな願いかはわからないけど、気の済むまでやらせてやりたくても、後ろにはまだ長蛇の列がある。
そろそろ行くかって意味を込めて頭に触れようと思ったとき、ぱっと上を向く綿菓子頭。






「行こっか!」
「おう」






そうして井上の手を取って歩き出した。






「なぁ、何をあんなに真剣にお願いしてたんだ?」
「ふぇ?」






綿菓子の次はりんご飴にかぶりつく井上に問いかける。
ワンピース作戦は成功のようで、俺のもつ袋にはりんご飴の次のたこ焼き、鯛焼き、金平糖とまだまだいっぱい入っている。






「腹一杯食いたいっていう願いは、もう叶ってんじゃねぇ?」
「む、黒崎くん・・・あたしを食いしん坊か何かとお思いで?」
「違うのか?」
「お、仰るとおりで」






袋に入った山ほどの食べ物を見せると、恥ずかしそうに笑う。






「あのね?」
「ん?」
「願い事は神様以外に言っちゃうと叶わないでしょ?」
「そうだな」
「でも、黒崎くんも神だから」
「死神だけどな」
「あはは」






だから叶えてねって、そっと耳元で教えてくれた。






「ーーーーーーーー」
「・・・ああ、叶えるよ」
「約束ね」
「おう」







*2014.12.26

ずっと黒崎くんと一緒にいたいです。
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