賜りもの

□*ゆうきのうた
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「男同士の熱〜い友情にかんぱ〜い!!」


ただの炭酸飲料をまるで酒かのごとくいっき飲みをする啓吾を横目に箸を進める。
つーか、やけに今日は「男同士」ってのを推すな。


「水色」
「ん?」
「啓吾の奴、ひょっとしてまた振られたのか?」
「みたいだね」
「だからか・・・」


昨日、啓吾が泣きながら遊びに行こうとしつこく誘ってきた。
メンバーは啓吾、水色、チャド、俺。
久しぶりに男同士遊ぶのもいいかなんて、軽いノリでオッケーした俺が馬鹿だった・・・。
朝っぱらからカラオケ5時間ときたと思ったら、ついさっきまではボーリング5ゲーム・・・。
俺だってカラオケやボーリングは嫌いじゃないけど、限度ってもんがあんだろうが!!
こんなことなら井上とのんびり過ごせば良かったと後悔。
まぁ、のんびり過ごすなんて口だけで、本当は緊張でガチガチ。
でも、そんな感覚は決して不快なんかじゃないんだ。


「一護ぉ〜!!ロンリー同士今日は飲み明かそうぜ〜!!」
「・・・・・」


お前が持ってるそれは本当にただのファミレスのドリンクバーの炭酸なのか?
このテンションは酒の一杯でも飲んでんじゃねぇ?
つか、ロンリーじゃねぇよ!!
だいたい、何で俺に言うんだよ!チャドだっていんだろうが!

って、言えたらいいんだけど。
コイツらに「井上と付き合ってる」なんて言ってみろ。
めんどくさいことが起こるのが目に見えてる。
というか、正直照れくさい。


(井上、どうしてっかな・・・)


まだまだ慣れない彼氏彼女のポジション。
2人とも恋愛初心者ってこともあるんだろうけど。
照れ屋で口下手な俺に比べて真っ直ぐな井上。
「好き」「大好き」って言葉を真っ赤な顔をしながらでも伝えてくれる。
当然、そのあとは2人して真っ赤になるのがお決まりだけど、それでもはっきり言って嬉しい。
その反面、俺が井上に「好きだ」と伝えたのは最初だけだ。
あぁ、つくづく自分のヘタレさが嫌になる・・・。


「一護」
「うん?」
「今日、本当に良かったの?」
「は?」


隣に座る水色が、珍しく困ったような顔をしながら訊いてくる。
俺達の向かい側では、啓吾が泣きながらチャドに愚痴をこぼしている。


「なにが?」
「悪いことしちゃったなぁって」「誰に」
「井上さんに」
「井上?」
「だってさ、僕の記憶が正しかったら、確か・・・」
「一護!!」


馬鹿デカい声で呼ばれる。
向かいに座る2人にも当然その声は届いたようで、目を真ん丸にして俺の後ろを凝視している。


「たつきじゃねぇか」


振り向いたそこに立っていたのはたつき。
って、ちょっと待て!
何でお前はいきなり俺の胸ぐらを掴んでんだよ!


「ちょ、待てこら!引っ張んなっつの!」
「あんた何してんのさ!?」


座ってたテーブルから引っ張りだされて、尚も掴まれたままの胸ぐら。


「何って、見てのとおり・・・」「織姫は知ってんの!?」
「知ってっけど・・・」


知ってるも何も、昨日話したばっかりだし。


「あんた今日、何の日かわかってる?」
「あ?」
「今日は何の日!?」
「何の日って・・・、別にただの日曜・・」
「この馬鹿!!」
「ゴフッ!」


たつきの拳が俺の鳩尾にもろに入る。
たつきてめぇ、自分が日本で2番目に強い女子高生ってこと忘れてんだろ。


「お前・・・、不意打ちは卑怯だろ・・」
「うるさい!あんた、マジでわかんないの?」
「だからなにがだよ」
「織姫は言わなかったかもしれないけど、今日はあんた達の1年の記念日でしょ!?」
「・・・え?」





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