10/10の日記
21:37
遅刻の一護誕 兼 七夕ネタC
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未だ終わってませんし、文字数もそんなに多くはないのですが、前回から大分時間が経ってしまったのと、キリの良いところまで行ったので、とりあえず続きを投げ込んでおきます。
あと残り1回か2回で終わるかな…。
なお、今回のアップに合わせまして、Bの文末に数行ほど加筆をしております。
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井上の様子がおかしくなったのは、バスを待つ人の長蛇の列に、駅までの帰り道を徒歩へと切り替えてから、程なくのことだった。
俺がいるなら安心だ…と、普段は使わないという、大通りから一本引っ込んだ裏道は、街灯も少なければ人通りもなくて。
どこか気持ちが落ち着かない俺の隣で、井上は
小さく鼻歌を歌いながら、まるで踊るような足取りでふわふわと歩いていた。
その、ご機嫌——としか言い表しようのない様子に、一層複雑さを増していく俺の心。
駅に着いてしまったら、俺が電車に乗ってしまったら、次に逢えるのはいつになるかもわからないのに。
しかしその気持ちは、未だ分単位しか時間の経っていない過去に、俺が彼女に告げた言葉と矛盾するようにも思えて。
尚更、八方塞がりな気持ちになりかけたところで、不意にがくん…と井上の膝が折れた。
「うぉあっ?!」
咄嗟に、井上の腕を掴む。
なんとか地面に激突するのは防いでやれたが、井上はそのままズルズルと力なく地面に座り込んでしまった。
「い、いのうえ?!」
慌てて、正面に回り込む。
肩に手を置き、顔を覗き込んで…次の瞬間、俺はギョッとして目を見張った。
さして明るくもない街灯の光でも充分わかるほど、井上の顔が赤かったのだ。
いや、よく見れば顔だけじゃない。
袖口からすらりと伸びる腕も、首も、耳も、露出している肌は漏れなく朱に染まっていて。
潤んでいるのか、やたらと煌めいて見える瞳は焦点を結ばず、ぼんやりとしている。
初めは、熱でも出したのかと思った。
具合が悪いのを無理して、俺に付き合っていたのではないかと。
しかし——。
「おい、井上っ?! お前まさか、これを喰ったのか?!」
道路に飛び散ったショルダーバッグの中身を拾い集めていた俺は、手に取った小箱の表面を何気なく見て、瞬時に青褪めた。
それは、結構な度数の洋酒を内包している、チョコレート菓子だったのだ。
「……ちゃんと、加減したつもりらったんらけろな」
「呂律も回せねぇで、加減もクソも有るか! そもそも酒入りの菓子なんざ喰うなよ、饅頭で酔っ払った前科持ちのくせして!!」
「ぅ……」
俯いて、肩を丸める井上。
俺はため息を吐きつつ、もう一度、井上の腕を掴んで引っ張り上げた。
そして、ふらつきながらも何とか立ち上がった彼女の、細腰を両手でがっちり掴むと、「うりゃっ」と肩に担ぎ上げる。
反射神経はともかく、死神化していない時の俺の腕力は、あくまで人間としての筋力しかないから、虚圏での時ほど軽々…とはいかなかったのだ。
それでも——酔い潰れた啓吾あたりを背負ったときに比べたら、井上は随分と軽い。
「ひゃぁあああっ?! く、くくくくろしゃきくんっ?! な、なにを…」
「うるせぇ、黙って大人しく担がれてろ! すぐそこに公園あるみてぇだから、着いたら下ろしてやる」
「れ、れも…」
「遊園地で人混み抜けたとき、4年前がどうのと言ってたろ。ついでだから7年前のこと思い出しつつ、反省でもしてろ」
「ええぇぇえ……?!」
抗議とも批難とも、困惑ともつかないおかしな声で呻きながらも、とりあえず井上は大人しくなった。
続く
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