続☆折原家の愛しい妹

□何時不変
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その日、空はいつものように晴れ渡っていた。
それは新宿も同様。
太陽の光が眩しいほど街に降り注いでいる。





「んっ………」





その朝日の眩しさに眉を寄せる少女。
気持ち良くベットで眠っていた少女はその眩し過ぎる光に苛立ちすら覚えた。





「あさ……?うー……まだ寝てから2時間しか経ってないのに…」





ぼすっと音を立てながら枕に顔をうずくめる少女の名は折原名無。
天才ハッカーの異名を持つ容姿端麗な少女だ。





「んっ……名無…おはよ…」




名無の隣には黒髪の男が眠っており、もぞもぞと動く少女に釣られ瞳を開けた。





「まだちゃんと寝てないんだろ…?昨日遅かったんだから…もうちょっと寝なよ」





男の名を折原臨也。
名無の兄である。

情報屋として仕事をしている謎多い男。
その姿は妹同様優美であり、見様によっては優男にも見える。
だがそんな甘ちょろい男でないことは新宿に住んでいる人間はもちろん、池袋では『関わってはいけない人間』として有名だ。

自動喧嘩人形の異名を持つ平和島静雄並に恐れられているのだから。





「お兄ちゃん……もう起きるの?」

「うん。今日は用事があるからねぇ。でも名無は寝てなよ」





チュっと音を立てて額にキスをすれば、名無は照れ臭そうに微笑み、穏やかな寝息を立てはじめた。

その様子を見た臨也も安心したように笑った後、キングサイズのベットから降り洗面所に向かう。

寝室の扉を開けると既に助手である矢霧波江がコーヒーを飲みながら仕事に取り掛かっていて、臨也は欠伸をしながら挨拶をした。





「早いね、波江さん」

「えぇ。今日は早く終えたいの。用事があるから」

「ふぅん。ま、いいけど」





洗面台から二つ並んだ歯ブラシの一つを抜き取り、口に含む。
消えたテレビの電源を付け、今日のニュースに目を通した。





「最近の東京は平和だと思ってたけど…そうでもないみたいだねぇ」

「あら。殺人なんてどこでだってあるわよ。日本が安全な国なんて遠い昔の話だわ」





今やどこでだって、些細なきっかけさえあれば殺人は起きる。
そんな世の中だ。

マンションに住んでいる住人が隣に住んでいる人間を『うるさかったから』なんて理由で殺したりもするのだから。





「ホント物騒な世の中だよねぇ。殺し、実に良くない」





もごもごと歯ブラシをくわえながら喋る臨也に波江は眉を寄せる。





「それより彼女。まだ寝てるの?」

「名無のこと?昨日遅くまで仕事してたみたいだからねぇ」





歯と顔を洗い終わった臨也はいつもの服に袖を通し、キッチンに向かう。
波江の立てた珈琲をカップに注ぎソファに座る。





「何か用事だった?」

「えぇ。仕事の依頼がきてるの」





ひらひらと白い封筒を振り、臨也に投げ捨てる。
綺麗に机に乗ったその封筒を開け、中身を見る。
それは確かに名無に届いた仕事依頼だった。
ご丁寧に『折原名無様へ』と掛かれており、報酬額まで記載されていた。





「なかなかいい報酬だ。でもまぁ…内容は興味ないなぁ」

「そもそも貴方にきた仕事じゃないわ」





やれやれと呆れる波江に封筒を返し、窓の外を見ながら大きく伸びをする。
見下ろした景色はやはりいつもと同じで、臨也はつまらなそうに鼻で笑った。





「それじゃぁ出掛けてくる。ここを出る時は名無がいるから鍵をかけてね」

「分かってるわよ」





いつもの上着に袖を通し、臨也は仕事に向かう為出掛けていった。
波江はそれを見届けたあと、立ち上がり寝室に向かう。





「んぅ……」

「…………」





折原臨也が唯一愛を伝える相手、名無。
今は穏やかな表情で眠っているが、あの事件のあった数ヶ月はなかなか寝付けなかったらしい。
夜中に起きては臨也や波江に泣き疲れるまで離れない。
そんな日々が続いていた。





「よく眠ってるわね…」





本当の姉のように慕ってくれる名無に波江は家族に近い愛情を抱き初めていた。
誠二のことを相談すれば真剣に頷き、意見をしてくれる。

大嫌いな折原臨也の妹でも不思議と嫌にはならなかった。





「たまには仕事を忘れなさい」





握りしめている携帯を気付かれないように抜き取り、波江は寝室を出た。





今日もそれぞれの休日が始まる。

情報屋もその部下もハッカーも、
創設者も罪歌も元黄巾賊も、
闇医者も、都市伝説も、喧嘩人形も。

皆それぞれ
休日を謳歌する―――――



 
 

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