世界が終焉となる時に

□思い出すと恥ずかしくなる記憶は誰にだってある
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コポコポ...











水の中……誰かが私を見つめている。
一人じゃない。
何人も………何十人も…私を『観察』している。






「生き残ったのはこいつだけか?」

「えぇ。他は使い物になりませんでした」






なんの話………?
よく聞こえない……






「しかしこの娘はまさしく完全なる鬼族!我々の実験の成功体と呼べましょう!」

「なるほど。ではこいつを試しに戦場に出してみるか」

「戦場とは……攘夷戦争のことでしょうか?」






戦争………?
戦争は嫌い。
敵も仲間もたくさん死んじゃうから……






「では験体1号の実技実験を行う」






験体1号……?実技実験……?
分からない………ナンノコト…?






「大いに活躍してくれることを祈ろうか」





























△▼






「ば、化けもっ…………」







ザシュッ――――








      血         血     血  
 

        血         血    血




    血血   血   血 血     血

            血




  モット モット        モット



、      モット    モッ ト     モット    


         モット



         モッ   ト





            チョウダイ







「ひひ………ヒヒヒ………」






意識がはっきりしない。
私じゃない人の声が聞こえてくる。
目の前にはたくさんの赤。
見えているのに、身体は私の意思と関係なく動く。

血が花びらのように舞い、着ている巫女服を染めた。






「お前………なんだ………?」






突然そう聞こえ視線を上げると、綺麗な顔付きの男が私の目の前には立っていた。
逃げてと叫びたいのにそれは叶わない。

男の表情はまさしく、『化け物を見た』という怯えた表情だ。
無理もない。
私は…………私の身体は今、素手で人を殺しているのだから。






「ィひ………ヒヒ……」

「…………っ!!」






地面を勢いよく蹴り男の首を絞める。
頭を支配するのはまた知らない人の叫び。
殺せ殺せと………絶え間無く叫んでくる。






「や…………だ………」






涙が流れるのに身体は止まってくれない。
必死に足掻く男の意識は遠ざかる寸前だ。






「高杉ィィィ!!!」

「!!」






突然切り付けられ、手は男の首から離れた。
切り付けてきた男を見ると、戦場には似合わない白い服と銀色の髪をした男。
仲間を守るために浴びた血が……身体中についている。






「貸しだぜ?高杉くんよォ」

「誰が助けろなんて言った」






仲間の人か………。
いっそのことこのまま殺してくれればいいのに…。
叫び声が脳内から消えている今のうちに。

しかし次の瞬間、脳内には別の声が聞こえた。


『戻ってこい』


ただそれ一言だった。
戻るって一体どこに戻ればいいのだろう?
そう考えた時には、再び意識は闇の中へ消えてしまった。



 
 

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