短編とリクエスト
□怠体療養
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池袋はやはり品揃えがいい。
どこのお店に入ったって何かしら探しているものが見つかるし、ちょっと変わったものも買ってみようという気になる。
「………ん?無無じゃねぇか?」
「静雄さんっ。こんにちわ」
ニコッと微笑みながら抱きつくと、困ったような照れたような表情を浮かべる静雄。
仕事の休憩中らしく、手にはコンビニで買ったお弁当とプリンが入っていた。
「あれ?今日トムさんは一緒じゃないんですか?」
「あぁ。トムさんは社長と露四亜寿司に食いに行くらしい。俺は寿司って気分じゃなかったし…プリン食いたかったから遠慮したんだよ」
軽く袋を持ち上げながら笑う静雄。
無無はそれをじっと見つめながら「プリン…買っとこ」と小さく呟く。
「お前は?飯食ったのか?」
「ううん。実はお兄ちゃんが熱出しちゃってね、ばたんきゅーなの。だからいるものを買いに来たんです」
そう言うと静雄は驚いた表情を浮かべた後、真顔で返す。
「それ殺れるチャンスか?」
「チャンスだけどやめて」
真顔な質問に真顔で返す無無に静雄はチッと舌打ちをしたあと、無無の頭を撫でる。
「お前のそういう優しいところは好きだぜ。ノミ蟲はくたばっても構わねぇが……お前が看病するんだったらなんも言えねぇな。とにかく移らねぇようにしろよ」
「はい。ありがとうございます」
静雄はそう言って無無の前を後にした。
相変わらず優しいと笑みをこぼす無無。
そして次のお店でポカ○スエットを買った後、目の前に見知った光景が広がった。
「あっれー?無無じゃねぇか」
「正臣に帝人!」
目の前にいたのはナンパを繰り広げことごとく振られている正臣とそれを溜息をつきながら眺めている帝人の姿だった。
「こんなところで偶然だなっー。これは神様のいたずらとしか思えねぇよ。というわけで無無。今から俺たちと遊………」
「帝人はいつも大変ね。嫌にならない?」
「時々どうしよもない羞恥に襲われるよ」
「……っておい俺は無視かいっ」
一通りのコントを繰り広げたあと、正臣が何故無無がここにいるのかと問う。
「お兄ちゃんがね、熱出して倒れちゃったの」
無無の言葉に正臣は固まり、帝人は目をまん丸くした。
「な、なにかの冗談かー?臨也さんが風邪……ってこと?」
「お兄ちゃんも人間だよ」
「信じられない」
「帝人。それどっちの意味なの?風邪引いたってことが?人間だってことが?」
とりあえず驚きの表情を浮かべる2人に無無は溜息をついた。
まぁ確かにここまで言われたって仕方ない。
悪魔と言われてるような男でもやはり人の子。
不規則な生活をしていれば風邪だって引く。
「まったく……それじゃぁ私もう行くね」
「へ…?……え、あぁ!そうだな!臨也さん風邪だもんな!」
「うん。帰り道気をつけてね」
2人に大きく手を振り、無無は新宿に帰るため再び池袋の街を歩き始めた。
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