はらりと落ちる花
□屯所には華を
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「よく来たな、美咲」
「歳三さん。お久しぶりです」
正座をし、深々と頭を下げる美咲。
土方の隣には局長である近藤勇も座っており、美咲の訪問にとても嬉しそうな表情をしていた。
「いやーよく来てくれた。わざわざ済まないね、仕事ではないのに」
「いいえ。私が行きたいと総司くんにお願いしたんですから、お気遣いなく」
そう言いながらにこりしながらと沖田を見ると照れ臭そうに顔を逸らした。
「あっはは!総司は昔から美咲くんに甘いからなぁ」
近藤の言葉に沖田は不機嫌そうな顔を浮かべる。
土方はそんな姿を見て肩をすくめて笑った。
「ま。今回のことは任せた。お前が今日会う奴は向こうの部屋だ。しょげてるみてぇだからよ、気晴らしに話し相手になってやってくれ」
なんだかんだ、人のことは構わずにいられないのが土方歳三という男。
『鬼の副長』と呼ばれてはいるが、情が深いというのは間違いないだろう。
「土方さん。僕が案内しますよ」
「おう。じゃぁ俺は片付けなきゃいけねぇ仕事があるからこれで。美咲、ゆっくりしていけよ」
「恐れ入ります」
土方が立ち去った後、近藤も仕事があると姿を消した。
沖田も美咲を案内するため席を立つ。
「こっちですよ」
手招きをすると沖田の歩幅に合わせて慌ててついて来る美咲。
そして閉め切られた部屋の前で止まると、美咲は「ここ?」と指を差した。
「えぇ。あとはごゆっくり。…千鶴ちゃん。昨日紹介した人が来たから入るよ」
それじゃぁよろしくね。
と沖田はその場を去った。
残された美咲はひとつ深呼吸をすると襖に手を掛け、ゆっくりと開けた。
「こ、こんにちは」
そこにいる少女の姿に、美咲は目を丸くした。
思っていたより遥かに幼い。
しかし瞳には江戸の女独特の強さが入り混じり、素敵な子だと美咲は思った。
「こんにちは。天音美咲と申します。貴女が千鶴ちゃんね?」
一方、千鶴も美咲と似たような感情を抱いていた。
容姿端麗……とはこの人の為にあるのではないかというぐらいに美しい。
「どうかした?」
ふわりと笑ってみせると、千鶴は顔を赤くする。
そして何事もないようにブンブンと首を振った。