世界が終焉となる時に

□自分の事って意外と知らないもの
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戦闘種族、鬼族。
夜兎族と並んで宇宙最強と謳われていた。

しかし、鬼族には夜兎族とは違う大きな点がある。
鬼族は戦闘種族であるのにも関わらず、戦いを嫌っていた。
戦いは自分や家族を守る為に行うもの。
それを奪われそうになったとき、その『最強』の力を使うのだ。






そんな鬼族は数年前、絶滅したと言われている。
理由は多々あったのだが、その中でも真実味を帯びていたのが『地球に巣くう幕府の実権を握る天人の実験台になった』という説である。

神楽達、夜兎族の間でもその噂は有名であり、同族の種の絶滅に喜ぶ者や嘆く者がいた。






何故『宇宙最強』と言われていた鬼族が幕府に連れ去られ、実験台にされたのか。
それは鬼族の弱点を突かれたからなのだ。



















△▼







「お前たち鬼族の弱点は……子供の存在アル」






神楽の紡ぎだす言葉に眩暈がした。
過去の映像が次々とフラッシュバックして、吐き気まで襲っていく。






「鬼族は繁栄の為に子を大切にするアル。その子供が仮に人質に取られたとして、さらに命の危機だったとしたら……大人の鬼族はその身を投げ出して子を守るネ」






どこの親も持っているそんな感情が、鬼族は人一倍強い。






「多分そこに付け入れられたネ。どうやったかは分からないケド、幕府は鬼族をそうやって滅ぼしたアル。まずは大人。それから……子供」






鬼族は14を越えると突然驚異的な力が芽生える。
それまでは人間と同じぐらいの力しかない。
だから大人は必死で子供を守るのだ。






「さらわれた後、多分噂通り実験台にされたアルヨ。だから記憶がない。だから知らないうちに成長している。つじつまは合うネ」






珍しく大人のように話す神楽に新八はもちろん、銀時ですら何も言えなかった。
話を飲み込もうとするので精一杯で、頭がいっぱいのようだ。






「この街までどうやって来たかは分からないケド……逃げてこられたのなら幸いネ」






張り詰めていた口調が穏やかになり、にっこりと微笑む神楽。






「種族は少し違うけど……でも仲間アル。私は味方ネ」






あ………まただ。
この感覚………あったかい…。






握られたその手は…やはり温かい。
目を閉じると瞳からは自然と涙が零れた。
神楽の隣にいる銀時や新八も安心したように微笑む。






「ま、とりあえず身体がよくなるまでは家にいろや。追い出すほど鬼じゃねーしな」

「そうですね。あ……そういえば名前。僕たちまだ名前を聞いてないです」






その言葉に、赤い瞳の女は弱々しく微笑みながら呟く。






「綾嶋夢音です」






終焉への歯車が……動き出した。
 
 

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