二
□修学旅行の夜のテンションはハンパじゃない
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満月――――
月に一度は訪れる真ん丸の光。
その光に浴びれば、夢音は真の姿となる。
黒い髪は白銀に染まり、赤い瞳は爛々と輝く。
私はそんな夢音を……今日初めて見た。
「夢音………?」
「神楽ちゃん……」
寝る場所がないから、銀ちゃんの部屋で寝ている夢音。
部屋を覗くと離れて引いてある片方の布団には銀ちゃんが既に寝ていて、もう片方は空っぽだった。
気になってみてもう少し襖を開けると、窓が開いていることに気付いた。
夢音が着てから必ず戸締まりをして寝ているにも関わらず、それが開いていることを不思議がっていると、その姿が目に入ったのだ。
「ホントに……夢音アルカ?」
「うん………本当…ですよ」
目を奪われた。
初めて見た鬼族の真の姿。
噂には聞いたことがあったが、これほどまでとは思わず驚き、魅了されてしまう。
「怖い……ですか……?」
「そ、そんなことないネ!綺麗だから……見惚れてたアル…」
そう言えば夢音はホッとしたように笑った。
いつもの優しい笑顔。
姿は違ってもやっぱり夢音なんだと少し安心する。
「少しお話してくれませんか……?眠れなくて…」
「もちろんアル。なんかお泊り会みたいでワクワクするネ」
眠っている銀ちゃんを起こさないよう、そっと夢音に近付く。
近くまで行くと夢音は私の手を引き、抱きしめた。
「…………え…?」
「なんだか……寂しくなってしまって…」
溜息をつきながら神楽の瞳を覗き込む夢音。
爛々と輝く瞳に神楽は息を呑む。
「前まで……夜は結構…好きだったんです…。でも今は…あまり好きになれなくて…」
「どうしてアルカ?」
そう聞くと、夢音は眠っている銀時に視線を移す。
「夜は……皆さん眠ってしまいます…独りぼっちになった……気分になるんです…」
平気だったのに……なんででしょうか…。
そう零した夢音は悲しそうな顔をしていた。
夢音は時々、こんな顔をする。
何かを考えながら切なそうに笑うのだ。
「大丈夫アル。夢音はひとりじゃないネ。私がひとりなんかにしないヨ」
「はい………ありがとうございます…」
夢音は私達が守る。
銀ちゃんだってそう言ってた。
もし本当に夢音が幕府の実験から逃げてきたのだとしたら……必ず追っ手が来る。
それでも守る………絶対に…行かせたりなんかしない。