□バランスが大事だよ、バランスが
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「邪魔するぜ万事屋」

「ちょ、ちょ……!どうしたんですか、いきなり!」






書状が届いてすぐ、事情を聞いた近藤も合流し、土方、沖田、山崎で万事屋を訪れていた。

突然ズカズカと入り込んできた真選組に驚く新八と、なんの騒ぎだと明らかに不機嫌な表情の銀時。






「なんですかコノヤロー。ここは俺ん家だぞ。家宅侵入罪だぞコラァ」

「夢音はいるか」






いきなり入り込んできた挙げ句夢音はどこかと聞く土方に銀時の機嫌はみるみるうちに悪くなる。






「夢音は神楽と出掛けてる。なんの用だ」






その言葉に、沖田は黙ったまま朝届いた書状を銀時の目の前に置いた。
椅子に背を預けていた銀時はそれを手に取り、読み上げ絶句した。






「オイ…冗談だろ………」

「幕府から来た書状だ。間違いない」






近藤の言葉はいつもより重みがあった。
銀時は添付されている写真を見つめ、書状と一緒に机にたたき付けた。






「どういうことだ!!説明しろっ!!」

「聞きてぇのはこっちだって同じだ!!夢音は何者なんだ!ただの天人じゃねぇのか!?」






土方の胸倉を掴んだ銀時は歯を食いしばりながらそっと離した。
書状を見た新八も状況を理解し、黙り込んでしまう。






「あいつはただの天人だ………そんだけだよ…」

「じゃあ何故、幕府から実験中の動物だと呼ばれている?」






近藤の言葉に銀時は押し黙る。
夢音と一番最初に会った時、神楽が離していた『噂』。
幕府の実験の為に絶滅したという鬼族を回収しについに動き出したのだ。






「ふざけんじゃねェ……」






来てから一度も喋らなかった沖田が、腰に刺してある刀を握り締めながら怒りに震える。






「動物だと………?……ふざけんじゃねェ……あいつは…夢音は人間も同様でさァ……」






怒りを鎮めようと必死に食いしばる沖田。






「……可愛くて……天然で……人の事を一番に思いやる……優しい女でさァ………それを実験の為に回収しろ……?幕府は一体何をしてるんでィ……」






行き場のない怒りが沖田を蝕む。
沖田だけじゃない。
それはこの場にいる全員が思っていることだ。






「……………俺達は…お前の味方になることが出来ん…」






おもむろに口を開いたのは近藤だった。






「幕府の命令通り………夢音ちゃんを監視する…」

「近藤さん!」






今にも泣き出してしまいそうなぐらい辛そうな表情の沖田。
しかし、近藤は意思を曲げなかった。






「俺は………真選組の局長だ。幕府からの命に背けば真選組が潰れてしまう。……こいつらの居場所を守るためにはそれしかない」






その言葉に沖田は何も言えなくなってしまう。
何よりも大事な場所。
それが分かっているからこそ、守ろうとするのは当たり前のことだから。






「だが……俺も夢音ちゃんのことは納得できん!だから万事屋。俺らは今回、お前らがやる事を出来るかぎり見逃す」

「…………」






銀時は黙ったまま近藤を見つめる。






「いいか?俺も出来るだけ上に掛け合ってみるが……それでも一ヶ月しかない。それまでに答えを見つけろ。俺達も出来るかぎり努力はする。夢音ちゃんには……うまいケーキをもらった恩義もあるからな」






ニッと笑った近藤に、銀時は『ばーか』と零しながら笑う。
そして大きく深呼吸をすると真選組と向き合った。






「あいつは俺達が守る。……お前らは真選組を全力で守れ」

「…………あぁ」






こうして………歯車は音を立てて歪み始めた――――

 
 

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