二
□楽しく過ごせたらそれでいい
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嘘だーーーー
何度心でそう叫んだかは分からない。
いつか来ると分かっていた。
でも……見ないフリをしていた。
迫る選択の時。
何を選ぶかは……はなから決まっている。
△▼
「銀時さん……元気ないですね…」
「……ん?………そうか…?」
「だって……ジャンプ…逆さです」
「あ…………」
雨。
今日はいつにも増して雨が強い日だ。
窓を打ち付ける雨音が万事屋に響く。
「大丈夫ですか…?いちごミルク飲みますか……?」
「…じゃぁ頼む」
「夢音!私あっついお茶が欲しいアル!」
「夢音さん。お手伝いしますよ」
いつもと何も変わらない万事屋。
新八には昨日あった出来事に関しては聞かなかったことにしろと言ってある。
それでも相当堪えているようで、買い物から帰ってきた夢音を見たとき、泣きそうになっていた。
「はい神楽ちゃん……あったかいお茶…」
「ありがとネ!」
こうやって改めて夢音をみていると、昨日の沖田くんの言葉を思い出す。
『動物だと……?……ふざけんじゃねェ……あいつは…夢音は人間も同様でさァ……』
『可愛くて……天然で……人の事を一番に思いやる……優しい女でさァ………それを実験の為に回収しろ……?幕府は一体何をしてるんでィ……』
その通りだと思ってる。
こいつはただの女だ。
鬼族だろーがなんだろーが関係ねェ。
ただの優しい女なんだよ。
それをどうして傷付ける?
どうして閉じ込めようとしやがるんだ。
「銀時さん……いちごミルクです……」
そう……この笑顔を守るって誓ったじゃねぇか。
守ってみせるって…約束しただろ。
「一緒に……ガトーショコラも…どうぞ…」
「うをぉっ!これ作ったアルか!?」
「うん……神楽ちゃんと新八くんもどうぞ…」
「うわぁ!いいんですか?ありがとうございます!」
自然に伸びた手の先、そこには愛おしい笑顔。
腕を掴んで引き寄せれば、夢音はすっぽりと胸に納まった。
「………銀…時…さん…?」
驚いた表情の夢音。
それは神楽と新八も動揺だが、俺はその手を離すことが出来なかった。
「大丈夫………ですよ……」
「…………!」
すると夢音はまるで子供をあやすようにポンポンと俺の背中を叩いた。
何度も何度も『大丈夫』と呟きながら。
「銀時さんは……ひとりじゃないです……神楽ちゃんや新八くん……今は……私もいます。辛いことがあったら……何でも言って下さい……」
こいつ………エスパーかよ……。
なんで分かるんだよ。
今がすげぇ辛いって。
なんで……俺が望む言葉をくれるんだ……。
「力になります……貴方が……私を救ってくれたように」
守りたい。傍にいたい。
またこいつを暗い場所に戻すなんて……そんなの間違ってる。
だから守る。
全てを隠さず話して、こいつにも理解してもらおう。
そしたらまた、『迷惑がかかる』とか言うんだろうな……。
でも俺は絶対にお前を離さない。
どんなことをしても守るよ……必ず。