折原家の愛しい妹
□臨也思考
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我ながらシスコンだということは重々承知していた。
離れて暮らしていた名無に受験はどこを受けるのか。
それが聞きたくて忙しい合間、久々に電話を掛けると迷わず『来良高校』と答えた。
理由はひとつ。
『お兄ちゃんが行ってた学校に行きたい』
今と昔では学校の名前が違う。
来良学園は昔、来神高校という名だった。
俺がシズちゃんや新羅、ドタチンと過ごしたある意味思い出たくさんの学校。
そんな純粋で可愛い妹に『ダメ』とは言えず、あっさりと了承したのだ。
俺の家に済むことを条件に。
「今どこにいるかなぁ」
携帯に登録してあるGPS機能で現在地を特定する。
「うん。ちゃんと学校にいるね。午後は…迎えに行かなきゃ」
可愛い可愛い俺の妹。
誰にも渡したくないし、本来なら誰の目にも曝(さら)したくない。
しかしそんな訳もいかず、社交的な妹は都会の街へ出たがる。
年頃の女の子だから仕方がないといえば仕方ないのだが、あの3人組のせいで随分妹に会える機会が減ってしまった。
「まったく……困ったものだよねぇ。創始者さんも、将軍さんも、罪歌さんも…」
携帯をパタンと閉じ、愛着のファーコートに袖を通す。
今日はどこに行こうか。
特に片付けなければいけない仕事もないし、池袋にいる自動喧嘩人形をからかいにでも行こう。
ふふっと怪しげな笑みを浮かべると広い部屋の自室から出ていった。