折原家の愛しい妹
□池袋上陸
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池袋を兄と歩く。
今日も仕事があった。
しかし名無の出番はなく、兄のスムーズな仕事捌きをただ見つめているだけで終わったのだった。
「露西亜寿司でも行く?」
「今日半額セール?行く!」
今日は機嫌がいいのか、兄の腕にぴったりくっつきニコニコと楽しそうな表情の名無。
臨也もそんな妹を見て小さく微笑む。
どこまでもシスコンだ。
「あれ?臨也に名無じゃねぇか」
「「??」」
兄妹同時に振り向くとそこには見慣れた人物の姿があった。
「よぉ」
「ドタチンっ//」
臨也の腕から離れドタチンと呼ばれた男、門田京平の胸に飛び込んだ。
勢いよく飛んできた名無を倒れないようしっかり受け止める。
「お前なぁ……その癖止めろって言ってるだろ?」
「えへへ♪それ静雄さんにも言われた」
ふわりと微笑みながら言う名無に門田は思わず顔を赤くし、溜息をつく。
そんな門田を見ながらニヤニヤと笑う影二つ。
近くに止まっているワゴンの中には、二人の男女がいた。
「ドタチンったら顔赤くしちゃってさー、すっかり名無の虜だよねーゆまっち♪」
「そうっすねー。にしても名無は相変わらず可愛いっす。まるで二次元から飛び出した美少女っすよ」
「テメーらなぁ!!」
ワゴンの中にいたのは普段から門田とつるんでいる狩沢絵理華と遊馬崎ウォーカーがいた。
「ゆまゆまにえりかっち//久々ーっ♪」
狩沢と遊馬崎に飛び付き、二人は片手ずつで名無を受け止める。
「久々だねー名無っちー♪イザイザと仲良くやってるー?」
「うん。仲良しだよ」
あーもう可愛い!と言って抱きしめる狩沢。
そんな様子を遠くから見つめる臨也と門田。
「ホント、どこに行っても人気者でね。兄としては少し心配だよ」
門田が腰掛けるベンチの隣に座り、愛おしそうな瞳で名無を眺める。
そんな臨也の表情に門田は「相変わらずだな」と笑う。
「お前は妹に弱いな」
「とーぜんだよ。あの子の為なら何でも出来る自信があるからね」
なんの躊躇いもなくそう言う臨也に缶コーヒーを渡す。
臨也は素直にそれを受け取った。
「それより名無っち♪コスプレとかしてみる気ない?」
「コスプレ?したいしたい!」
「マジっすか!何着せるんですか狩沢さん」
遠くから聞こえる三人の会話に耳を傾けながら臨也は缶コーヒーのフタを開ける。
プシュっと空気が入る音が鳴り、消えた。
「そんな事よりお前。池袋(ここ)に長居してて大丈夫なのか?さっき静雄に会ったぞ 」
門田の言葉に臨也は「それは最悪だね」と声を漏らし口を付けた缶コーヒーのパッケージを見つめる。
「シズちゃんに会うのは嫌だなぁ…。いや、俺一人の時ならいいんだけど、今日この時間は名無とゆっくりしたいし」
こいつ……どんだけ妹といたいんだ…。
あまりのシスコンぶりに門田は思わず臨也を白い目で見た。
そんなことお構い無しというように臨也はニコッと門田に笑いかけ、ベンチから立ち上がる。
「名無。そろそろ行くよ」
「あ、はーい!ゆまゆま、えりかっち!また遊んでね」
たたっと臨也のもとに駆け寄る名無。その後ろ姿を見て「萌えー」と零す遊馬崎と狩沢。
「この辺でドタチンがシズちゃんに会ったんだって。早々に切り上げようか」
「え?お寿司はー?」
「今日はなし。その代わり俺が何か作るよ」
「お兄ちゃんの手料理?やった!」
再び抱き着いた名無の指に自分の指を絡めた臨也は妹の嬉しそうな表情に満足そうな表情を浮かべ、新宿にある家へ戻っていった。